2015 Fiscal Year Research-status Report
通信における線形観測に基づく劣決定問題に関する研究
Project/Area Number |
15K06064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 和則 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50346102)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 線形観測 / スパース性 / 離散性 / 過負荷MIMO |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,特に,離散値ベクトルを解にもつ大規模な劣決定系線形方程式の解法について検討した.レニー情報次元に基づく再構成では,特別なクラスの観測行列に対して有効な解法が知られているが,一般の係数行列に対する手法はまだ知られていない.そこで,我々は,最近提案された近接分離法に基づく離散値ベクトルの再構成法である SOAV(sum-of-absolute value )最適化の手法に着目し,その手法を通信の諸問題に適応可能なアルゴリズムに拡張した.具体的には,オリジナルのSOAVでは雑音の影響が考慮されていなかったが,圧縮センシングのl1-l2最適化のアイデアを利用して雑音の影響を取り込み,さらに,SOAV最適化の重み係数を更新しながら繰り返すIW-SOAV(iterative weighted SOAV)を提案した.そして,その手法を過負荷MIMOやFTN信号伝送,マルチユーザ検出などの通信の諸問題に適用することで,その有効性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により,本研究における大きな課題である「過負荷MIMO」と「信号の離散性の活用」については,当初の予定以上の進展があったと言える.特に,SOAV最適化を利用した信号再構成手法は低演算量で実装可能であり,従来法で手出しが出来なかった離散値ベクトルを解にもつ大規模劣決定系線形方程式に対する極めて有効な手法であると考えられる.このアプローチを過負荷MIMOやFTN信号伝送,マルチユーザ検出などの通信の問題に適用することで,これまで実現できなかった特性を達成可能であることを示したことは,大きな意義がある.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に検討した,離散値ベクトルの再構成に関する研究で得られた知見をもとにして以下のような課題について取り組む. 1. 誤り訂正符号の復号と組み合わせた再構成法の検討:昨年度の検討で考えたIW-SOAV最適化の重み係数は再構成結果から経験的に得られた確率を次の再構成の事前確率として用いるアプローチであった.しかしながら,実際の通信の問題では誤り訂正符号が用いられており,そこではターボ信号処理などの確率伝搬法に基づく手法が広く用いられており,IW-SOAVの重み決定をその枠組みに載せて行なうことで更なる特性改善が期待される.また,大規模MIMOの信号検出では計算量を削減するために確率伝搬法を用いた信号検出法が有効であることが知られており,大規模システムに適したIW-SOAVとの親和性も高いと考えられる. 2. レニー情報次元に基づく再構成理論の通信応用:レニー情報次元に基づく再構成の一つの問題は,近似メッセージパッシング(AMP)に基づく再構成アルゴリズムの実装の複雑さが挙げられる.しかしながら,最近AMPのパッケージが信号処理関連の研究者のグループによって公開される等,その障壁が徐々に下がっている.離散値ベクトルの再構成に関する限界などの理論的な検討に関しては,このアプローチによる手法が先行しているため,SOAVだけでなくAMPを用いた再構成法についても検討を行なう.
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