2015 Fiscal Year Research-status Report
高温高湿度の高度利用のための湿度測定法と精度評価技術に関する研究
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15K06114
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊與田 浩志 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (10264798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター 物質計測標準研究部門, 主任研究員 (20356372)
辻岡 哲夫 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40326252)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 湿度標準 / 不確かさ / 過熱水蒸気 / 乾湿計 / 多孔質セラミックス / センシング / 計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気圧近傍で、沸点温度を超える高温高湿度の気体(過熱水蒸気を含む)は、樹脂材料の加速耐久試験、農水産物の乾燥・消毒などの加工、塗料や樹脂の熱処理などで利用されている。更に近年は内燃機関の効率向上のために高温気体の湿度測定が普及してきた。これらの装置の高性能化やプロセスの最適化のためには、安価で手軽に利用できる湿度(水蒸気と空気の混合割合、水蒸気モル分率)の計測が有用である。そのため、すでに複数のメーカーより高温用の湿度測定装置が販売されているが、高湿度の上限である空気を含まない過熱水蒸気までを測定範囲の湿度条件として想定したものは少なく、高温かつ高湿度域での測定精度が明確になっていない場合も多い。 本年度は、まず近年の高温高湿度の利用と現場ニーズについて、研究者や計測器メーカの協力のもとでヒアリング調査を行った。その結果、測定ニーズがある一方で、湿度の表現方法が複数あり、特に高温高湿度域でその値の物理的な意味が分かりにくいこと、汚れが付きやすい環境で使用されることが多く測定装置の価格と耐久性の改善を期待されていることが把握できた。続いて、高温高湿度域での湿度計の測定精度を評価するために、300℃以上、水蒸気モル分率0.01(室内空気)~1.0(過熱水蒸気)の湿度標準を発生できる装置を試作した。NMIJによる校正済みの露点計を二次標準として発生湿度(水蒸気モル分率)の精度を露点温度50℃~95℃の範囲において確認し、その最大偏差は 0.007であった。また、研究代表者らが開発を進めている乾湿計の原理を用いた湿度計の精度について検証し、同範囲での湿度標準との最大偏差は0.011であり簡便で実用的な方法であることが確認できた。また、ふく射、圧力、温度の測定精度に基づく不確かさ解析と寄与率について考察を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って研究を進めることができており、湿度標準の発生装置の試作とその精度評価を行った結果、新たに購入した露点計による計測可能範囲において、比較的高い精度の湿度が得られていることがわかった。ただし、湿度の安定性においては、当初より想定していた水蒸気供給量の不安定に起因する課題が残された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、高温高湿度域の湿度利用技術の向上を目指しており、昨年に引き続いて高湿度を利用している現場の状況調査とニーズ把握について、引き続き連携研究者らの協力のもとで推進する。また、これまでに湿度の校正範囲として扱われることがなかった露点温度95℃~100℃(大気圧での沸点)の湿り空気や過熱水蒸気中での湿度の測定精度を確認するため、前年度に試作した高温空気と過熱水蒸気の混合方式による湿度発生装置について、空気と過熱水蒸気のそれぞれの流量計測と制御、飽和槽を用いた空気調湿の有効性について検討し、更に改良を行う予定である。改良後の湿度発生装置により、計測器メーカーの協力のもとで、市販品の過熱水蒸気近傍の高温高湿度域での精度評価と課題抽出を行う。また、乾湿計の原理による湿度測定装置についても、不確かさ要因の解析を行いながら、安価で手軽な測定装置として開発を継続し、測定精度の向上のために計測環境の影響を抑えるための改良を行う。
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Causes of Carryover |
露点計と露点計測のための部品選定に十分に時間をかけたために、購入時期は当初計画よりも遅れた。しかし、高露点で実績のある製品に変更し、露点計の仕様にあわせた保温機能のある配管材料を同時に選定し購入することができた。その結果、購入時期が遅れ、湿度発生装置の試作とその検定も年度末にずれ込んが、試作した湿度発生装置により目標としていた精度の湿度を得られることが確認できた。当初、初年度に予定していた湿度発生装置の改良を2年目に先送りしたことで、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現状の課題をふまえながら、予算内で最も合理的な方法で湿度発生装置の改良を行う。
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Research Products
(5 results)