2017 Fiscal Year Research-status Report
単一母相或いは同一結晶構造のpn素子から構成された酸化物熱電変換モジュールの開発
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15K06479
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中津川 博 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40303086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 美和 神奈川大学, 工学部, 助教 (60594215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電特性 / 熱電変換材料 / 熱電変換モジュール / p型素子 / n型素子 / 強相関電子系 / 遷移金属酸化物 / ペロフスカイト酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱電変換技術に基づいた熱電発電は、自動車や火力発電所から排出される廃熱をエネルギー変換効率10%程度で電気エネルギーに直接変換する廃熱回収技術である。熱電変換材料に要求される条件は、熱化学的に安定で、高温大気中で長時間利用可能であり、地球上に豊富に存在する無毒の元素で構成される化合物であることが挙げられる。従来型の熱電変換材料は、低融点や毒性・高温での酸化・高コストといった問題を抱えており、広く発電材料として普及するまでには至っていない。 一方、酸化物熱電変換材料は、モジュール製造にセラミックスプロセスが流用でき、酸化防止被膜などを用いる必要が無く、高温大気中や火炎中で長時間安定に発電が期待できるなど、その低コストと安定性が非常に魅力的な材料である。しかしながら、従来型の熱電変換材料と異なり、単一の母相からp型及びn型素子を提供できる材料系が見つかっていない為、酸化物モジュール構築には、高温に晒されるpn接合部分の安定性、電極・集電体の選択、熱膨張率の不一致や電極-素子間の相互拡散など解決すべき技術的課題が残されている。 本研究の計画している具体的な研究項目は、①Mnペロフスカイト酸化物の中から単一母相でpn素子作製の可能性、②高いp型の熱電特性が報告されているFe及びCrペロフスカイト酸化物の中からZT~0.5前後の組成を材料探索し、高いn型の熱電特性を示すMnペロフスカイト酸化物との間で同一結晶構造によるpn素子作製の可能性、及び、③酸化物熱電変換モジュールによる未利用廃熱回収発電の可能性を解明することである。 従って、本研究では、強相関電子系であるペロフスカイト構造の遷移金属酸化物に着目し、単一母相或いは同一結晶構造の材料系から、酸化物モジュールの構成要素として使用可能なp型及びn型素子の候補を開拓し、その足掛かりを得ることを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般的な固相反応法を用いて多結晶試料Pr1-xSrxMnO3 (0.1≦x≦0.7)、Pr0.9Sr0.1(Mn1-xFex)O3 (0≦x≦1)、及び、Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.7)を作製してきた。試料の同定は、粉末X線回折測定を現有設備(横浜国立大学)である強力X線回折装置(RINT2500)を用いて実施し、RIETAN-FPプログラムを用いたリートベルト解析により結晶構造パラメーターを精密化した。更に、現有設備(横浜国立大学)であるSQUID磁気特性測定システム(MPMS)を用いて室温以下での磁化率の温度依存性を測定し、室温以上の磁化率は東京大学物性研究所 電磁気測定室のMPMSを共同利用することによって700Kまでの温度範囲で測定することにより広い温度範囲で磁気相転移温度を同定した。また、電気抵抗率とゼーベック係数は、室温以下では現有設備(横浜国立大学)であるホール効果・比抵抗測定システム(ResiTest8300)を用いて、室温以上では現有設備(神奈川大学)である熱電特性評価装置(ZEM-3)、及び、自作装置を用いて測定評価した。熱伝導率は、現有設備(横浜国立大学)であるレーザーフラッシュ法熱定数測定装置(TC-7000)を用いて熱拡散率を測定し、現有設備(横浜国立大学)であるSMK-401を用いてアルキメデス法によりバルク密度を測定し、現有設備(神奈川大学)である示差走査熱量計(X-DSC7000)を用いて比熱を測定して算出した。以上より、無次元性能指数ZTは、Pr0.9Sr0.1MnO3において、500KでZT=0.0035のp型熱電特性の極大値を示すが、Pr0.9Sr0.1FeO3において、850KでZT=0.024のp型熱電特性を示し、Pr0.3Sr0.7FeO3において、850KでZT=0.002のn型熱電特性を示すことも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度、Mnペロフスカイト酸化物による単一母相からのp型とn型素子の作製の可能性を明らかにすることができなかった。そこで、平成28年度、同一結晶構造による酸化物pn素子の可能性を明らかにする為、Feペロフスカイト酸化物のp型熱電特性に着目し、Pr0.9Sr0.1FeO3において、850KでZT=0.024のp型熱電特性を確認した。平成29年度は、改めてPr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.7)の熱電特性を評価し、p型熱電特性はやはりPr0.9Sr0.1FeO3が最大の特性を示すこと確認すると同時に、Pr0.3Sr0.7FeO3において、850KでZT=0.002のn型熱電特性を示すことも確認した。この結果は、Feペロフスカイト酸化物による単一母相からのp型とn型素子の作製の可能性を示唆しており、平成30年度は、更なる高い熱電性能を示す材料探索を目指して、多結晶試料Pr1-xCaxFeO3 (0.1≦x≦0.9)とLa1-xCaxFeO3 (0.1≦x≦0.9)の熱電特性を評価する予定である。もし、1000KでZT~0.5前後の比較的高いp型熱電特性を示すFeペロフスカイト酸化物が発見できれば、同等のn型熱電特性を示すCaMnO3系酸化物材料と組み合せることにより、同一結晶構造による酸化物pn素子の可能性も明らかにすることが期待される。
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Research Products
(3 results)