2016 Fiscal Year Research-status Report
熱間塑性加工による相変態を利用した純チタン材の集合組識制御と高強度化原理の構築
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15K06503
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梅田 純子 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (50345162)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 水素化チタン / 純チタン / 集合組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存のTi材料において,その高強度化には必須とされてきた合金成分(特に希少金属)を一切含まず,水素のみを用いて高強度化を達成するといった新奇な完全レアメタルフリー純Ti焼結材の創製を目指し,本年度は微視的構造解析を通じて熱間押出加工過程でのTi母相の相変態とその際の集合組織形成挙動,さらに焼結材の力学特性に及ぼす水素原子の振る舞いを詳細に調査した.具体的には,水素含有量が異なる純Ti焼結体を対象に,〈0001〉集合組織を有する押出加工材の破断伸びに及ぼす水素含有量の影響を解析した.脱水素処理を施した試料の引張試験およびその内部組織観察の結果,水素含有量,即ち水素化物の析出量の減少とともに,処理材の破断伸びは低下しており,水素化物がほぼ見られなくなった脱水素処理材の破断伸びは,脱水素未処理材と比較すると約1/3にまで低下した.また,両材の破断内部組織には,〈0001〉集合組織の特徴である{10-12}変形双晶が存在したが,脱水素未処理材においては,結晶粒間に析出した水素化物相が双晶の進展・粗大化を阻害している様子が確認され,また双晶は著しく微細であった.さらに,脱水素処理材の変形が,双晶の局所的発生と粗大化によって破断部近傍に集中していたのに対し,脱水素未処理材では,結晶粒間に析出した水素化物相によって,双晶の進展・粗大化を抑制し変形を分散することで,〈0001〉集合組織でありながら試料全体を大きく均一変形させることに成功しており,これによって一般的な〈10-10〉集合組織を有する純チタン押出加工材と同等の高延性を発現したと結論付けられる.このような特異な集合組織の形成は,熱間押出加工時に水素がβ相安定化因子として作用することでチタンのβ-α遷移温度が低下し,結果としてβ単相域からの塑性加工が安定化することに起因している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,水素原子と水素化物の分布状態に関して,押出後の冷却過程でのβ→α相変態とそれに続く特異な集合組織形成への水素原子の影響,および引張試験過程でのα-Ti結晶内で局所的に発生する変形双晶の一様分散化への微細な水素化合物の影響を明らかにしたことに加えて,従来は「負の材料因子」とされてきた水素の活用による純Ti焼結材の高強度化機構を解明したことから本研究に関する進捗状況はおおむね順調に進展したと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
β相安定化元素である不純物成分のFeを含むJIS-純Ti材を対象に,相変態を伴う熱間塑性加工温度の適正化を通じて,<0001>α結晶配向形成による高強度化を検証ことで本プロセスの普遍性・汎用性を明らかにし,水素のみで高強度化を達成する新規な高強度化設計原理の構築により完全レアメタルフリー純Ti焼結材の創製を目指す.その際,Fe添加量によるβ相の分布状況を画像解析により定量化することで幾何学的なβ相の複合化組織(具体的にはα-Ti結晶粒界を取り囲むようなネットワーク構造)の形成によるTi焼結材の引張耐力およびヤング率の向上効果を検証する.併せて,SEM内引張試験によるFe固溶β相の破壊挙動をその場観察により解明し,本チタン材の強化機構の解明を試みる.
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