2015 Fiscal Year Research-status Report
超臨界流体物性制御によるレーザー支援ナノ材料合成および形態制御
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15K06540
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
東 秀憲 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (40294889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 章文 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40344155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / レーザーアブレーション / ナノカーボン / ナノダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,雰囲気流体として二酸化炭素を,ターゲット物質としては炭素を選択し,二酸化炭素が気体,液体および超臨界状態において炭素ターゲットへのレーザーアブレーションを行った。温度、圧力条件をいくつか変えて,二酸化炭素が気体,液体および超臨界流体となる条件において実験を行い,雰囲気流体の状態が生成粒子に及ぼす影響について検討した.得られたナノ粒子の形態を電子顕微鏡により観測すると同時に粒度分布を測定し,粒子形態および粒度分布に及ぼす雰囲気流体の密度の影響およびそれに伴う物性の影響について考察した。 また,このようなさまざまな条件において生成したナノ粒子について,透過型電子顕微鏡(TEM)による形態観察,制限視野電子線回折図形による結晶構造解析およびラマン分光分析による全体の結晶性の評価を行い,その特性を評価するとともに,流体の密度が基板へのレーザー照射により生じるプルームへの影響から,粒子生成メカニズムを検討することで,生成粒子の形態および粒子物性に及ぼす雰囲気流体物性の影響について考察を行った。 雰囲気流体が密度の小さな気体の場合には,得られたナノ粒子は結晶性の低いアモルファス状態で,凝集体を形成しており,一次粒子径も数nm程度と微小であったが,雰囲気流体の密度を増加させ,高圧の超臨界状態および液体状態にした場合には,得られたナノ粒子の一次粒子の平均粒子径は数十nmにまで増大するとともに,結晶性の高い球形ナノ粒子が孤立分散状態で数多く観察された.また,これら球形ナノ粒子のうち粒子径が数nm以下のものは結晶性が高く,高分解能TEMによる観察の結果,それらの結晶格子間隔がダイヤモンドに相当することが確認された.さらに,制限視野電子線回折図形からも単結晶体特有の回折パターンが確認され,解析の結果,これら微小粒子は立方晶ダイヤモンド構造を有することが確かめられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生成粒子の分級を試みた際に観察されたポンプ由来と思われるコンタミの原因の特定に時間をとられたり,研究計画時に予定していた新規セルの製作が遅れているものの,これまでに行った種々の条件下でのレーザーアブレーションにより得られたナノカーボンの特性評価はおおむね順調に進展している.また,今年度は雰囲気流体物性として密度に着目し,液体,気体および超臨界状態と変化させた二酸化炭素中でのレーザーアブレーションにおいて,雰囲気流体の密度の違いにより,生成プルームの大きさや状態が大きく異なることを仮定したモデルの提案を行った.本モデルにより,プルーム内の温度・圧力変化を予測し,雰囲気流体の密度が,得られるナノカーボンの粒子形態等に大きく影響する可能性が示唆されている.今後,実験条件を拡張するとともに,一部の条件において再現性を確かめることで実験結果を検証する必要があるが,これまでに得られている結果の解析と理論的考察はおおむね予定通りである.
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Strategy for Future Research Activity |
進歩状況でも記述したとおり,今後,実験条件を拡張するとともに,一部の条件において再現性を確かめることで実験結果を検証する必要がある.また,雰囲気流体の物性制御による生成ナノ粒子の形態制御を実現するためには,実験結果の蓄積と合わせてより詳細な理論的考察を進めていく必要がある.そのためには,まず今年度提案したモデルの妥当性について検証するために,現在作製中の新規セルを早急に完成させ,様々な雰囲気流体条件下におけるレーザー照射により生成するプルームの観察を行う予定である.観察結果と本モデルの仮定とを比較することで,モデルで提案しているプルーム状態の雰囲気流体密度依存性の妥当性について検討できる.また,一部の条件での再現性の検討とともに,さらに条件を大きく振って実験を行うことで,より詳細に雰囲気流体の影響を観察し,プルームの観察結果およびモデルによる検討結果と合わせて,生成粒子の形態および粒子物性に及ぼす雰囲気流体物性の影響について明らかにし,雰囲気流体の物性制御による生成ナノ粒子の形態制御に関する知見を蓄積する予定である.
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Causes of Carryover |
生成ナノ粒子の分級を検討した際に生じたポンプ由来と思われるコンタミの原因の特定や故障したポンプの修理(故障原因の特定)に思いのほか時間をとられたこともあり,新規に制作を予定していたセルの設計および最適化が当初の予定より遅れたことにより,セル製作のための諸費用の一部が次年度へ繰越となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越分は主に,現在作製中の新規セル製作のための経費として計上することに加え,昨年度ポンプ修理等に消費した分を,次年度に予定していた経費の一部を変更して,新規セルのための経費に回し,残りの額を二酸化炭素やカーボンターゲット,配管材料およびレーザー関連の消耗品および学会参加(発表)や調査のための旅費等に配分する予定である。
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