2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06575
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 哲志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (80398106)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タンパク質 / ケージド化合物 / ドラッグデリバリー / 哺乳類細胞 / 光線力学的療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質表面に、刺激分解性リンカーを介して嵩高い保護基を修飾し、多機能性の刺激応答性タンパク質(ケージドタンパク質)を創生する研究を行っている。本年度は、嵩高いケージドタンパク質を細胞表層および細胞内で用いることができるのかについて検討を行った。その結果、細胞表層での光刺激に応じて、モデルタンパク質であるトランスフェリンが活性化できることが示された。この成果をもとに、薬剤修飾トランスフェリンを用いて、光照射に応じて薬剤を細胞内に運搬するシステムを開発した。また、嵩高い保護基で保護した毒性タンパク質を、市販の細胞導入試薬を用いて細胞内に導入し、細胞内で光活性化できるかも調べた。その結果、細胞毒性の無い弱い光を用いて、光依存的に細胞死を誘導できることが示された。以上の結果より、細胞内外での応用が可能であることが確認された。 自発的に細胞内に移行する細胞透過性のケージドタンパク質の開発にも着手した。まず、光増感剤色素付きのポリアルギニンペプチドを使って、タンパク質を細胞質に送り込む技術の開発を試みた。その結果、色素付きペプチドを3個以上修飾したストレプトアビジンが、光照射をトリガーにして細胞質内に導入されることが示された。そこで、この色素付きペプチドを付けたストレプトアビジンを嵩高い保護基としてモデルタンパク質に修飾し、細胞質内への導入を試みている。また、これまでの光応答性リンカーを用いた光応答性タンパク質に加えて、還元剤分解性のリンカーを用いた還元環境応答性タンパク質の開発にも着手した。メルカプトエタノール二量体をベースとした還元剤応答性リンカーの合成を行い、このリンカーを介してタンパク質表面に嵩高い合成ポリマーを修飾する手法も確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、細胞表層および細胞内で嵩高いケージドタンパク質が機能することを確認することができた。また、計画通りに、細胞質に自発的にケージドタンパク質を導入できるシステムの開発にも成功した。さらに、還元環境下で切断されるリンカーの合成と、リンカーを介した嵩高いポリマーの修飾方法も確立できた。これより、おおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、H28年度は、合成ポリマーを用いて高い水溶性と安定性を保持した嵩高いケージドタンパク質の開発に着手する。また、H27年度に始めた刺激応答性の拡張や、細胞透過性の付与についても、開発したシステムの細胞内外での評価を進めたい。H29年度に計画している、実験動物を用いた機能評価に向けて、培養細胞を用いた実験系において土台となる技術をしっかりと確立したい。
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Causes of Carryover |
本年度、細胞内外で機能する嵩高い保護基の合成のための消耗品費を多く計上していたが、従来から用いてきた保護基でも機能することが確認できたため、計画していた合成実験を行う必要がなく、計画を下回る支出となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今回繰越す費用は、来年度以降、実験動物や安定性評価実験の結果をもとに、保護基の改良を行う際の消耗品費として使用する予定である。
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