2016 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類の歩行運動を形成する脊髄神経モジュールの同定と再構築
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15K06695
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西丸 広史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (20302408)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歩行 / 神経回路 / 脊髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の運動神経回路は、その複雑さからその動作原理については依然として不明の部分が多い。本研究はマウスの脊髄において、歩行運動の基盤となる協調したリズミックな運動出力を生み出すことができる最小の神経モジュールを突き止め、その実験結果をもとにシミュレーションを用いて検証し、歩行運動神経回路を理論的に再構築することを目的とする。今年度は、リズム活動の際、運動ニューロンへの興奮性および抑制性のシナプス入力による膜コンダクタンスの定量的変化を推定する手法を開発し、原著論文として公表した。この論文では、マウス新生児の摘出脊髄組織において、セロトニンとグルタミン酸受容体のアゴニストの一つであるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)の灌流投与によって運動ニューロン群に歩行運動様のリズム活動を誘発させ実験の際、単一運動ニューロンからホールセルパッチクランプ法によって記録された膜電位の変化を元に、歩行運動の際のシナプス入力を推定する方法を開発した。今回は特に屈筋を支配する運動ニューロンに着目し、歩行運動の際に関節を屈曲させる筋が収縮弛緩をする際、運動ニューロンが、どのようなタイミングと強さで興奮性シナプス入力と抑制性シナプス入力を受けるのかを、電流固定法による膜電位記録から推定した。その結果、筋が収縮するタイミングで興奮性シナプス入力が、弛緩するタイミングで抑制性シナプス入力が強くなることが推定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、歩行リズム活動の際の運動ニューロンの膜コンダクタンスの変化を電流固定法による膜電位記録から計算論的に推定する手法を開発し、その成果を原著論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られたマウス新生児の腰髄組織片の左右の運動ニューロンにおいて誘発されたリズミックな活動パターンの詳細な解析を行い、歩行異常を示すマウスとの比較を行う。
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Causes of Carryover |
動物実験を行うよりも計算論的推定手法に多くを割いたため予定よりも消耗品の購入額が小さかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験のための消耗品の購入、研究打ち合わせおよび成果発表のための旅費に使用する。
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