2016 Fiscal Year Research-status Report
神経障害時のグリア細胞由来リポ蛋白による神経保護に関する研究
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15K06781
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
林 秀樹 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (90508657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経変性 / リポタンパク質 / 神経保護 / 緑内障 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障は発症原因が不明な進行性の神経変性疾患であり、多因子性の疾患と考えられている。また日本の中途失明原因疾患の第1位であることから、効果的な治療薬の開発が望まれている。しかしながら臨床的に効果が確認されている治療薬は眼圧を下げることを主な目的としており、日本の緑内障患者の半数以上を占める正常眼圧の緑内障患者への治療効果は限定的である。 研究代表者はこれまでの研究で、グリア細胞から放出されるアポリポタンパク質E含有リポタンパク質が、視神経を構成する網膜神経節細胞の細胞死(アポトーシス)を抑制することを明らかにした。 本年度の研究では、興奮性神経毒であるグルタミン酸で誘導される神経細胞死に対し、アポリポタンパク質E含有リポタンパク質の神経保護効果が、どのタイミングで発動するのかを検討した。実験には初代培養網膜神経節細胞を使用し、コンパートメント培養法により、細胞体近傍部と遠位軸索を分離培養した。実験の結果、グルタミン酸により細胞体近傍部で誘導される細胞死に対し、アポリポタンパク質E含有リポタンパク質が神経保護効果を発揮し、その保護効果はグルタミン酸と同時添加または添加2時間後でも同程度であった。またグルタミン酸による細胞内カルシウム濃度の上昇を、蛍光カルシウム指示薬を用いて解析したところ、アポリポタンパク質E含有リポタンパク質の添加による影響は観察されなかった。このことからアポリポタンパク質E含有リポタンパク質により誘導される何らかの神経保護シグナルが、グルタミン酸で誘導されるカルシウム過剰流入後の細胞死誘導シグナルを抑制すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、アポリポタンパク質E含有リポタンパク質による軸索を介した逆行性神経保護機構により、障害後の神経保護が可能なことが示された。また網膜神経節細胞のコンパートメント培養法により、アポリポタンパク質E含有リポタンパク質の逆行性神経保護機構に細胞内カルシウム濃度の変化は寄与しないことを明らかにした。これらから本研究は、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をもとに、イムノブロットや免疫染色などを用いて逆行性神経保護機構を明らかにする。またコンパートメント培養法を用いた神経―グリア細胞部分共培養の条件を最適化し、確立を目指す。
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Research Products
(7 results)