2015 Fiscal Year Research-status Report
新規動物モデルを用いたヘルパーT細胞分化に対する胸腺内ビタミンAの作用機序の解明
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15K06796
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山田 俊幸 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20183981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土田 成紀 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20142862) [Withdrawn]
七島 直樹 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (80333730)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘルパーT細胞の分化 / レチノイン酸 / Gata3 / Fog1 / Gata3遺伝子プロモーター / クロマチン構造 / SDラット (SDR) / 弘前ヘアレスラット (HHR) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画を遂行するため以下の解析を行った。 抗体産生に対するレチノイン酸の効果:SDRとHHRにKLHを抗原として皮下投与し、さらにATRAを腹腔内投与したところ、コントロールのDMSOを腹腔内投与した場合に比べてSDRでは血中の抗KLH IgM量, IgG量がともに上昇していたがHHRではほとんど変化しなかった。これらの結果から、レチノイン酸は免疫反応に重要であることが示された。 ヘルパーT細胞の分化に伴うGata3遺伝子の発現変化とプロモーター領域のクロマチン変化:Gata3遺伝子の発現は、SDRでは胸腺内でDP細胞からCD4-SP細胞への分化時に1/4程度になり、その発現レベルを維持したまま脾臓に移り、抗原投与後の脾臓のCD4陽性細胞においても変化はなかった。HHRではすべての段階においてSDRよりGata3遺伝子の発現は低下していたが、発現変動のパターンにはSDRと顕著な差はなかった。そこでChip解析によりGata3遺伝子のプロモーター領域のクロマチン構造を解析したところ、SDR、HHR共に胸腺DP細胞では遠位プロモーター、近位プロモーターともに活性型クロマチン構造を持つが、Gata3遺伝子の発現が低下するCD4-SP細胞以降は遠位プロモーターが不活性型クロマチン構造に変化しており、これがGata3遺伝子の発現レベルの低下の原因と考えられた。 ヘルパーT細胞の分化に伴うFog1遺伝子の発現変化:Gata3の活性をタンパク質レベルで制御するFog1の遺伝子発現は、SDR、HHRともに胸腺DP細胞、CD4-SP細胞、また脾臓のCD4陽性細胞を通じて顕著な変化はなかったが、抗原投与後にはSDRの脾臓CD4陽性細胞では4倍程度上昇したのに対し、HHRでは2倍程度の上昇だった。このことから抗原投与後の免疫反応に対するFog1の重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究より、レチノイン酸は免疫反応を増強することが明らかになった。我々は、レチノイン酸投与によって胸腺DP細胞でGata3遺伝子の発現が上昇することを見出しており、それがヘルパーT細胞の分化促進を通じて免疫反応を増強したものと考えられる。また胸腺DP細胞でのGata3遺伝子の発現には同遺伝子の遠位プロモーターの活性化が重要であるという結果も得られた。これらのことから、レチノイン酸からGata3遺伝子の発現誘導に至る経路に遠位プロモーターが介在する可能性が浮上してきた。これは研究実施計画にあるレチノイン酸からGata3遺伝子の発現誘導に至る道筋を明らかにするという項目に沿うものである。 またGata3に加えてヘルパーT細胞の分化や抗原投与後の免疫反応に対するFog1の関わりも明らかになってきた。Fog1はGata3の活性を正または負に調節するので、Gata3の活性調節には遺伝子の発現のみならず、タンパクレベルでの調節も重要である可能性も示された。
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Strategy for Future Research Activity |
胸腺DP細胞での、レチノイン酸刺激に引き続くGata3遺伝子遠位プロモーターの活性化とGata3遺伝子の発現という経路が見えてきたので、遠位プロモーターに結合する因子を同定してこの経路を解明し、ヘルパーT細胞の分化制御の一端を明らかにしたい。 免疫反応が正常のSDRと抑制されているHHRの相違点のひとつは、胸腺DP細胞でのレチノイン酸に応答したGata3遺伝子の発現量の差である。当初は、胸腺で確立されたGata3遺伝子のエピジェネティック制御の差(SDRで活性型、HHRで不活性型)が脾臓に持ち越され、ヘルパーT細胞の機能の差に結びつくと考えた。しかしながら今回、遠位プロモーターのクロマチン構造はSDR、HHR共に脾臓では不活性型に変化し、その結果として両者とも脾臓ではGata3遺伝子の発現は低下していた。 一方、抗原投与後にはSDRの脾臓CD4陽性細胞ではFog1遺伝子が顕著に上昇したが、HHRではそうではなかった。Fog1はGata3の活性を正または負に調節するので、脾臓においてはFog1によるGata3の活性調節がヘルパーT細胞の分化を制御している可能性もある。そこで今後はこれについても解析したい。
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Causes of Carryover |
本年度前半は他の研究テーマの論文執筆があり、本テーマの実験時間が予定より少なく、購入物品が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用予定である。
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