2016 Fiscal Year Research-status Report
セイヨウタンポポの定着・拡大における種間交雑とエピジェネティック変異の役割
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15K06933
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外来種 / 保全 / 進化 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.中国での採取を予定していたが、多地点での採取許可を得ることが出来なかった。そのため、北京、および、韓国ソウルの周辺にある公園で、タンポポの生育状況を予備的に観察した。また、過去に中国と韓国で採取していたサンプルについて予備的な雑種分析を実施した。その結果、いずれの地域でも雑種タンポポは見いだせず、日本以外に雑種タンポポがいない可能性が示唆された。なお、中国での採取許可の早期の取得が困難であると判断されたことから、今後は、日本以外の調査地域としてオーストラリアのみを対処とすることにした。そのため、本年度は、オーストラリアにおけるセイヨウタンポポの分布情報を文献、インターネット、関係する研究者、等を使って収集し、採取計画の立案と採取許可申請の準備を進めた。現地での採取作業は来年度実施する予定である。 2.予定していた中国での果実サンプルが得られなかったため、栽培実験は行えなかった。 3.集団間の遺伝的多様性とエピジェネティック変異の検出には、当初、AFLP解析とMS-AFLP解析を用いる予定であったが、昨年度に、より情報量の多い次世代シーケンサーを用いる解析方法を使う計画に変更した。そのため、本年度は、AFLP解析に代わる方法であるRADseq法のタンポポでの有効性を検討した。これまでに採取したセイヨウタンポポ、および、雑種タンポポのサンプルから抽出したDNAを調整し、RADseq分析を外注した。年度中には分析データが納品されなかったため、今のところ、有効性は確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.当初計画では、2017年度に中国国内の緯度の異なる2地域での果実採取を予定していたが、調査許可が取れず、サンプル採取を行うことが出来なかった。そのため、今年度予定した中国のサンプルを用いたセイヨウタンポポの栽培実験も実施できなかった。残念ながら、中国で果実採取の許可を得ることは、将来的にもかなり困難であることがわかった。 2.AFLP解析に代えて、RADseq法を予備的を実施した。ただし、研究室に次世代シーケンサーが無いため、分析は外注で行う必要があった。すでにサンプル調整と分析依頼(外注)は完了しているが、2016年度中には、残念ながら、分析が納品されなかった。そのため、タンポポでの有効性は現時点では未確定である。来年度のはじめに分析結果が得られる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.採取許可を得ることの難しい中国でのサンプル採取をあきらめ、オーストラリアの緯度の異なる3集団からのみ果実を採取する計画に変更する。外国での調査許可が得られない危険性については、計画段階である程度予想されていたものであり、中国とオーストラリアの両国のどちらかで採取できれば大幅な変更をせずに研究を実施できる計画となっている。 2.H27年度に確立した実験方法で、発芽実験と栽培実験を実施する。また、H27年度に高温下で栽培した個体から採取した果実についても同様の実験を行い、高温ストレスによって親世代と違う特性(エピジェネティックな変異)が生じるかどうか検証する。ただし、オーストラリアでの採取は開花季節の関係から秋以降になるため、栽培実験、遺伝子分析の完了が予定よりやや遅くれる可能性もある。 3.RADseqの分析結果を確認し、次世代シーケンサーを用いた方法のタンポポで分析手法を確立する。また、MS-AFLP解析に代わるEpiRADseq法(またはMSRADseq法)についても、タンポポでの分析手法を確立する。これらの解析方法を用いて日本とオーストラリアのサンプルの遺伝的変異とエピジェネティック変異を集団間で比較する。また、各集団の雑種解析を行い、雑種タンポポとセイヨウタンポポの遺伝的多様性とエピジェネティック変異の違いについて解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は、当初予定していた中国でのサンプル採取が出来なかったため、栽培実験も実施できなかった。そのため、これらに必要な経費(旅費、消耗品費)を使用しなかった。また、新しい分析手法であるRADseq法を実施し、分析を外注(その他の経費)したが、分析結果が年度内に納品されなかったため、支払は次年度になる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中国でのサンプル採取に替えて、研究協力者と共にオーストラリアでのサンプル採取を行うため、2名分の旅費が必要になる。中国サンプルで予定していた栽培実験をオーストラリアと日本のサンプルで行い、そのために必要な消耗品を購入する。また、外注済みのRADseqのデータがH29年度初めに納品予定であり、外注費(約60万円)として支払う予定である。加えて、新たな分析方法であるEpiRADseq (または、MSRADseq)を計画中であり、これらの方法には次世代シーケンサーによる分析の外注が必要なため、追加の試薬代、謝金、外注費として、次年度以降の経費と合わせて支出する。
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Research Products
(1 results)