2018 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of hybridization and epigenetic mutations in distribution expansion of common dandelion, Taraxacum officinale
Project/Area Number |
15K06933
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外来種 / 保全 / 進化 / 植物 / タンポポ |
Outline of Annual Research Achievements |
世界中に分布を拡大したセイヨウタンポポは、無融合生殖(無性生殖)種でありながら、移入先の新しい環境に急速に適応して「侵略性」を獲得したとされる。急速な環境適応のメカニズムとして「在来タンポポとの雑種形成」と「エピジェネティックな変異」の2つの可能性が指摘されている。 本研究では、まず、交雑相手の二倍体タンポポが分布する地域(大阪)と分布しない地域(沖縄、北海道)のセイヨウタンポポと雑種タンポポを材料に環境適応、遺伝的多様性、エピジェネティック変異を比較した。各地域のサンプルを同じ条件で栽培したところ、発芽、成長、開花の特性が生育地によって異なることが明らかになった。また、高温条件で栽培すると、同じクローンのセイヨウタンポポが無性的につくった子供個体の間にも多様なエピジェネティック変異が見られることがわかった。この結果は、高温ストレス等で生じたエピジェネティック変異が子供にも伝わることを示唆する。 最終年度には、オーストラリアの3地域からセイヨウタンポポのサンプルを採取し、日本とオーストラリアのセイヨウタンポポと雑種タンポポの遺伝的多様性を地域間で比較した。その結果、雑種タンポポとセイヨウタンポポは、どちらも多様なクローンを含んでおり、両者の遺伝的多様性に大きな違いは見られなかった。また、同じ地域の個体は遺伝的に似ており、地域間で何らかの選択が働いている可能性が示唆された。 以上の結果は、セイヨウタンポポの移入先環境への適応には、1)多様なクローンの中からより適したクローンが選択される、2)移入先で生じたエピジェネティック変異が子孫に伝わる、3)在来種との交雑で新しい遺伝子を獲得する、の全てのメカニズムが複合的に貢献していることを示唆する。
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