2016 Fiscal Year Research-status Report
Chromatin reprogramming induces functional switching of DNA methylation enzyme
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15K06950
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
多田 政子 鳥取大学, 染色体工学研究センター, 教授 (10524910)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ES細胞 / DNAメチル化 / リプログラミング / Dnmt1 / 5-ヒドロキシメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAシトシンのメチル化(5mC)の正確な制御は、哺乳類の正常胚発生や細胞分化ならびに恒常性維持に必須です。DNAのメチル化酵素には、新規付加型のDnmt3aとDnmt3b、維持型のDnmt1があります。Dnmt1の新規付加型の活性については、議論はあるものの証明はされていませんでした。私たちは、H27年度までに、Dnmt1の新規付加活性は未分化なマウス胚性幹細胞(ES細胞)では検出感度以下であるものの、分化依存的に増加することを見出しました。また、Dnmt1のメチル化は、クロマチンが不活性な領域よりも緩い領域から始まることを見出しました。そこで、H28年度は、Dnmt1の新規付加活性をバイサルファイト法により定量的に示すとともに、Dnmt1による新規5mC化領域がどのように制御されているのか解析しました。中内胚葉分化誘導剤Activin A、Tet酵素やヒストンK9の脱メチル化酵素を活性化するビタミンCの入ったKSR、HDAC阻害剤のいずれかを添加して培養すると、Dnmt1による新規メチル化が促進されることを見出しました。Tetは、5mCを5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換する酸化酵素であり、これら処理により5hmC変換も同時に誘導されました。5mC並びに5hmC化領域は、ユークロマチン領域からヘテロクロマチン領域へと経日的に拡大することが明らかになりました。これらの結果は、大型の酵素であるDnmt1がUhrf1やPCNA非依存的にDNAに作用するには、クロマチンの活性化が必須である可能性を示唆しています。よって、Dnmt1の新規型メチル化活性は、胚発生初期において、クロマチン構造が緩和されるリプログラミング時期に特異的に働いていると予想されます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、発生初期でのDNAメチル化レベルの低下は、エピブラスト状態からの早期離脱を招く可能性を見出した。一方で、中内胚葉分化誘導ではDNAメチル化レベルの増加とTetを介したDNAメチル化レベルの低下が同時におきることを見出した。この現象を人工的に誘導する方法を見出し、中内胚葉分化誘導の効率を格段に向上できた。このことは、ES細胞から培養下で組織細胞をつくりだす方法の改善に多いに貢献すると思われる。 本研究を通じ、広く共同研究ネットワークを構築した:英国のGurdon Institute、カナダのブリティッシュコロンビア大学、大阪大学蛋白質研究所)(論文投稿準備中)。 成果発表:招待講演【国外 (2)】、学会発表【一般口頭発表(2)、ポスター発表(2)】。分子生物学会のポスター発表では、優秀ポスター賞、染色体学会の口頭発表では、ベストプレゼンテーション賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスES細胞がエピブラスト様細胞に分化する際、Dnmt3a/3bが存在しなくてもDnmt1のみで十分であることが分かった。しかし、Dnmt1の新規メチル化活性のみでよいのか、新規メチル化活性と維持メチル化活性が共に働かないと充分なDNAメチル化レベルに達しないのか明らかになっていない。この課題を解決する目的で、Dnmt1の維持メチル化活性に必須であるPCNAとUhrf1の結合ドメインを欠損した変異Dnmt1を強制発現させたDnmt1/3a/3bの三重欠損株を分化誘導し、エピブラスト分化マーカーの発現を定量性RT-qPCRによって解析する。また、本研究結果を論文として本年度中に投稿・発表する。
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