2015 Fiscal Year Research-status Report
リボソーム触手様タンパク質とアミノアシルtRNA合成酵素の相互作用の構造基盤解明
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15K06964
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊東 孝祐 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20502397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 智博 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (60534550)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リボソーム / 触手様タンパク質 / アミノアシルtRNA合成酵素 / 翻訳 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
リボソーム表面で柔軟かつ広範囲に運動する“触手様タンパク質”は、翻訳因子と直接相互作用して翻訳因子をリボソームへとリクルートする。我々はこれまでに、触手様タンパク質と翻訳伸長因子の相互作用の構造基盤を明らかにしてきた。一方で最近、触手様タンパク質が、翻訳因子とは構造も機能も全く異なるアミノアシルtRNA合成酵素とも相互作用し、アミノアシルtRNAを翻訳因子へ効率よく供給する役割も担うという、タンパク質合成の新たな仕組みが明らかになった。そこで本研究では、我々のこれまでの実験基盤を利用し、触手様タンパク質・アミノアシルtRNA合成酵素複合体の構造を明らかにすることを目的とした。しかし、触手様タンパク質はフレキシブルな構造を有しているため、そのままの状態では結晶化が困難である。そのため、本年度は、まず生化学的解析により触手様タンパク質のアミノアシルtRNA合成酵素との相互作用部位を特定し、結晶化に適した構造が安定な触手様タンパク質断片(触手様タンパク質ペプチド)を作製することを目的とした。 実験は、好熱性古細菌M. thermautotrophicusの触手様タンパク質およびM. thermautotrophicusのセリルtRNA合成酵素を使用して行った。そして、触手様タンパク質の削除体を数種類作製し、ネイティブアクリルアミドゲルを利用したゲルシフトアッセイにより触手様タンパク質の削除体とセリルtRNA合成酵素の相互作用を調べた。その結果、セリルtRNA合成酵素は触手様タンパク質のC末端から50残基の領域と相互作用していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
触手様タンパク質とアミノアシルtRNA合成酵素の相互作用は弱く、その検出は非常に困難であった。具体的には、プルダウンアッセイでは触手様タンパク質とアミノアシルtRNA合成酵素の相互作用は検出できなかった。また、ゲルシフトアッセイにおいても、通常の条件では触手様タンパク質とアミノアシルtRNA合成酵の相互作用は検出できず、pHやゲル濃度など様々な条件を検討することではじめて、触手様タンパク質・アミノアシルtRNA合成酵素複合体を検出することができた。そのため、当初の計画では初年度に、アミノアシルtRNA合成酵素と相互作用する触手様タンパク質の領域を特定する予定であったが、上記のごとく相互作用部位を特定するための分析系の確立に時間がかかったため、おおよその領域を特定するに留まった。だが、相互作用分析法が確立したので、来年度からは研究を加速させることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立することができた触手様タンパク質とアミノアシルtRNA合成酵素の相互作用の分析系により、今後はアミノアシルtRNA合成酵素と相互作用する触手様タンパク質の部位をさらに特定する。部位が特定されたら、その部位の発現系を構築し、あるいはペプチドを化学合成して、アミノアシルtRNA合成酵素との共結晶化に取り組む。また、本年度はアミノアシルtRNA合成酵素としてセリルtRNA合成酵素を使用していたが、来年度からは他のアミノアシルtRNA合成酵素についても解析を進めていく。そして、1種類の触手様タンパク質が、なぜ様々なアミノアシルtRNA合成酵素と作用することができるのか、その構造基盤も明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度はアミノアシルtRNA合成酵素と相互作用する触手様タンパク質の部位を特定し、その発現系またはペプチドの化学合成、そして結晶化に取りかかる予定だったが、上記のごとくそこまで研究が進行しなかったため、ペプチド合成費用および結晶化に必要な試薬類の消費が無かった。そのため、当初の予算使用計画よりも使用金額が下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、触手様タンパク質の削除体の調製および結晶化を行う際に、試薬類に100万円、ガラス・プラスチック器具類に50万円が必要となる。アミノアシルtRNA合成酵素と相互作用する触手様タンパク質の部位が30残基以下の場合は、その部位のペプチドを化学合成して共結晶化を行う。ペプチドを化学合成は専門の業者に外部委託する。これに30万円が必要となる。回折強度データの収集は高エネルギー加速器研究機構(筑波)で行うが、このための旅費として18万円が必要となる(3万円 x 2人分 x 3回 = 18万円)。研究成果を学会で発表するための旅費として10万円が必要となる(第39回日本分子生物学会年会、横浜、3泊4日)。
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