2015 Fiscal Year Research-status Report
膜結合性ヘムタンパク質PGRMC1の構造的制御による生理機能の解明
Project/Area Number |
15K07011
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加部 泰明 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20397037)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 金属タンパク質 / ヘム / 結晶構造解析 / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新規のガス応答性因子として同定した膜タンパク質タンパク質PGRMC1についてX線結晶構造解析を行い、PGRMC1の詳細な分子構造を世界に先駆けて明らかにした。PGRMC1は、タンパク質中のチロシン残基を介した珍しい様式でヘムと配位することが分った。この配位したヘムはタンパク質表面上に突出した構造を取っており、PGRMC1は分子中のアミノ酸残基をほとんど介さずに突出したヘム同士が重なり合った特異なヘム重合体構造を形成することを見出した。PGRMC1はヘムのない状態ではアポ体としてモノマー構造で存在するが、ヘムと結合することにより2量体化することが明らかとした。生体内ガス分子であるCOは、PGRMC1上のヘムに結合するとヘム同士の重合が解離してPGRMC1の機能が消失することを見出した。さらに、このようなPGRMC1の構造的制御とがん細胞における機能の関わりについて解析を進めた結果、PGRMC1はヘムにより重合化して、がん増殖に関わるEGFRと会合して、これによるがん増殖シグナルを増強することを新たに見いだした。また、重合化したPGRMC1は薬物代謝酵素であるシトクロムP450とも会合して抗がん剤の分解活性を増強して、がん細胞の薬剤耐性を促進することが分った。このように本研究の解析により、PGRMC1はがん細胞内のヘム濃度に応答して重合化することによって活性化し、がん細胞の増殖促進や抗がん剤耐性獲得に関与するという、ダイナミックな構造変換によって機能していることを明らかとし、これらの知見について平成27年度にNature Communications誌に受理され掲載された。 さらにPGMRC1を介したCOガスの生理機能について、個体レベルでの効果について検証を行うために、PGRMC1の発現を薬剤誘導性に一過的に抑制できるPGRMC1 knockdownマウスの作成に成功しており検証を行っている。現在、このKDマウスを用いたPGRMC1の肝炎やメタボリックシンドロームに対する効果の解析を推進している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに新規ガス応答性ヘムタンパク質PGRMC1の結晶構造解析に成功し、これがヘムを介した新規の2量体構造を示す事を明らかとしている。さらにヘムによる2量体形成によってPGRMC1はEGFRやシトクロムP450と会合して活性化し、がん増殖の進展に関わる事を見出している。これらの知見を基に遺伝子組み換えマウスを用いたPGMRC1の未知の生理機能について解析を進めており、肝機能や脂質代謝に関わる知見を得ており、平成28年度以降も引き続きこれらの機能的な解明を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで明らかとしたheme-stacking 構造を形成したPGRMC1を介した生理的な機能制御の解明のため、PGRMC1に相互作用する因子の解析を行うととともに、マウス個体レベルの機能を明らかとする。 (1)PGRMC1に相互作用する因子の包括的解析 現在、細胞膜上でPGRMC1に相互作用する因子群について、membrane-based yeast two-hybrid システムで解析しており、約40種以上の候補タンパク質が見つかっている。これらの候補分子として、レドックス制御や脂質代謝・輸送に関わる因子が多く同定されており、これらとPGRMC1の結合様式の解析を行い、癌や炎症に関わる作用の解明を目指す。 (2)in vivoモデルにおけるPGRCM1の癌・炎症に対する作用の解明 現在PGRMC1-KDマウスを用いて、薬剤が効果を示す事が知られる急性肝炎モデルでの検証を行っており、PGRMC1が肝炎発症の要因となる事を見出している。今後、急性および慢性肝炎におけるPGRMC1の作用を解析し、その分子機構の解明を目指す。また癌への効果に関しては、スーパー免疫不全マウス(NOG mice)を用いたヒト大腸癌細胞の肝転移モデルでの検証を行い、PGRMC1および薬剤の効果を検証する。
|
Causes of Carryover |
平成27年度においては、PGRMC1の主にin vitroにおけるがん増殖に関わる作用の解析を重点として行い、これらの知見について論文投稿を行った。これにより、コストの掛かるPGRMC1遺伝子組み換えマウスの解析を次年度に重点を置いて推進するため、上記計上した予算を平成28年度に繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、平成28年度においてPGRMC1遺伝子組み換えマウスを用いたin vivoの生理機能の解析を推進するため、実験動物の繁殖や維持管理の費用を計上するとともに、マウス血液サンプルに含まれるサイトカイン類などの変動を解析できるELISAキットなどの消耗品の費用を計上する。
|
Research Products
(5 results)
-
[Journal Article] Haem-dependent dimerization of PGRMC1/Sigma-2 receptor facilitates cancer proliferation and chemoresistance.2016
Author(s)
Kabe Y, Nakane T, Koike I, Yamamoto T, Sugiura Y, Harada E, Sugase K, Shimamura T, Ohmura M, Muraoka K, Yamamoto A, Uchida T, Iwata S, Yamaguchi Y, Krayukhina E, Noda M, Handa H, Ishimori K, Uchiyama S, Kobayashi T, Suematsu M.
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: 11030
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
-
[Journal Article] LATS1 and LATS2 phosphorylate CDC26 to modulate assembly of the tetratricopeptide repeat subcomplex of APC/C.2015
Author(s)
Masuda K, Chiyoda T, Sugiyama N, Segura-Cabrera A, Kabe Y, Ueki A, Banno K, Suematsu M, Aoki D, Ishihama Y, Saya H, Kuninaka S.
-
Journal Title
PLos One
Volume: 10
Pages: e0118662
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Impacts of CD44 knockdown in cancer cells on tumor and host metabolic systems revealed by quantitative imaging mass spectrometry.2015
Author(s)
Ohmura M, Hishiki T, Yamamoto T, Nakanishi T, Kubo A, Tsuchihashi K, Tamada M, Toue S, Kabe Y, Saya H, Suematsu M.
-
Journal Title
Nitric Oxide
Volume: 46
Pages: 102-113
DOI
Peer Reviewed
-