2015 Fiscal Year Research-status Report
植物の有性生殖器官形成の新奇マスター転写因子の同定と機能解析
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15K07104
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山岡 尚平 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00378770)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有性生殖 / 器官形成 / 環境応答 / 信号伝達 / 転写因子 / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では苔類ゼニゴケの有性生殖器官形成に関わるマスター転写因子を同定し、その発現調節機構と下流遺伝子の網羅的同定により、苔類の有性生殖器官形成のメカニズムの全体像を解明することを目的とする。本年度は有力な候補である転写因子BONOBOがゼニゴケの有性生殖器官形成に必要十分であるかどうかを検証した。これまでにBONOBOの過剰発現により有性生殖器官が形成されることを明らかにした。そこで今回、遺伝子ターゲティングによりBONOBO遺伝子のノックアウト株を作成したところ、有性生殖器官形成が全く見られなくなった。またノックアウト雌株にBONOBOのコーディング領域とプロモーター領域のゲノム配列を導入したところ、ノックアウト表現型が回復した。このことから、BONOBOはゼニゴケの有性生殖器官形成に必要十分であり、導入したゲノム配列は少なくとも雌株ではその機能を相補しうることが明らかとなった。 次にプロモーター領域を用いてレポーターアッセイを行ったところ、この領域は、遠赤色光(FR)に富む光による長日条件下において、葉状体の先端部でのみ活性化し、FR非存在下あるいは短日条件下では活性化しないことを明らかにした。また定量PCR解析によりBONOBO発現のFR・日長依存性を調べ、FR存在下かつ長日条件下でのみ転写産物が蓄積することを明らかにした。 さらに、BONOBOのC末端側にグルココルチコイド受容体のホルモン結合ドメインを付加したBONOBO-GR株を作成した。BONOBO-GR株は雌雄両方の株においてデキザメサゾン(DEX)依存的に有性生殖器官を形成した。この株を用いて、RNAseq解析によりDEX投与後12時間以内に発現変動する遺伝子を網羅的に調べた。その結果、BONOBO活性化特異的に発現変動すると考えられるいくつかの遺伝子を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定していた主要な研究についてほとんど成果を得ることができたと考えている。特に本年度のテーマであった苔類有性生殖器官形成におけるBONOBOの重要性について主要なデータを得ることができた。さらにBONOBO下流遺伝子の網羅的解析については、平成28年度に予定していたRNAseq解析を前倒しで実施することができた。一方でBONOBOの発現調節機構の解析については、プロモーター領域の同定はできたと考えているが、転写因子の探索は来年度以降に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はBONOBOの発現調節機構について、上流の調節因子の同定とBONOBO発現調節における役割を明らかにする。特にこれまで有性生殖器官形成に関与することが明らかにされているGI, FKF1, CDF, PIFのホモログに注目し解析を行う。また、酵母1ハイブリッド法などによりBONOBO上流域に結合する転写因子の探索を行う。 また、これまでの解析でBONOBO発現の高質BONOBOの発現の時空間パターンをより詳細に解析するために、蛍光タンパク質遺伝子のノックインによるBONOBO翻訳産物のin vivoでの可視化を行う。 また本年度のBONOBO-GR株のRNAseq解析により見出した下流因子の候補遺伝子について、ゲノム編集もしくは遺伝子ターゲティングによるノックアウトを行い、機能の解明を目指す。 加えて、被子植物におけるBONOBO相同遺伝子ファミリーの機能を明らかにするために、シロイヌナズナ多重変異体の作成と機能解析・発現組織解析を行う。
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Research Products
(11 results)