2016 Fiscal Year Research-status Report
分裂酵母ミトコンドリアDNA結合タンパク質の機能解析と進化的考察
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15K07168
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
宮川 勇 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (50136165)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / ミトコンドリア / ミトコンドリア核様体 / Cmb1 / Abf2p / ミトコンドリアゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeのmtDNA結合タンパク質Cmb1の欠損が遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかを検証した。S. pombe核遺伝子のアクチン遺伝子の発現を基準として、ミトコンドリアゲノムにコードされたATPaseサブユニットatp6および21S rRNA遺伝子の発現量をRT-PCR法により検出した。その結果、野生株とCmb1欠損株においてミトコンドリア遺伝子の発現量に差がほとんど認められないことが明らかになった。Cmb1の欠損がミトコンドリア遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかを、引き続き検討中である。次に、Cmb1の発現が出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアDNA (mtDNA)結合タンパク質Abf2pの欠損による障害をどのように相補するかを詳しく解析した。これまでは、S. cerevisiaeにおけるCmb1の高発現の影響を調べてきたが、今回はシングルコピープラスミドpRS316にAbf2pのプロモーターで発現するCmb1遺伝子を組み込んで、同じ条件でのAbf2pの発現による影響とを比較した。その結果、Abf2pの欠損によりおこるミトコンドリア核様体数の減少やミトコンドリア核様体の凝集は、Abf2pの発現により野生株の状態に回復するが、同じ条件でのCmb1の発現では回復せず、Cmb1の高発現条件下でのみ回復することが明らかになった。一方、 Abf2pを高発現するとミトコンドリア核様体の凝集がおこった。この結果から、Abf2pとCmb1はmtDNAの安定化と維持において、機能的に異なる性質を持っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は計画通り、Cmb1がミトコンドリアゲノムの遺伝子発現を制御している可能性を明らかにするために、野生株とCmb1欠損株のミトコンドリア遺伝子の転写活性を調べることができた。また、出芽酵母S. cerevisieのabf2遺伝子欠損株でみられるミトコンドリア核様体の凝集などの異常形態を、Abf2pとCmb1の発現により正常型に戻すことができるかを調べた実験から、Abf2pとCmb1はmtDNAの安定性に対して異なる機能を持っていることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、Cmb1のN末端側にHMG box様のDNA結合ドメインがあるのかどうか、およびCmb1とAbf2pのHMG boxの機能的差異を明らかにするために、Cmb1のHMG boxが存在すると思われるN末端側半分と、HMG boxが存在するC末端側半分を分離して、S. cerevisiseで発現させ、その機能的違いを解析することを計画している。また、従来、分裂酵母S. pombeのミトコンドリア核様体はDAPI染色法での観察が容易ではないことが分かっていたが、最近、我々は別の分裂酵母Schizosaccharomyces japonicusを用いることで、ミトコンドリア核様体を非常に鮮明に染色できることを見い出した。そこで、S. japonicusを新たな分裂酵母の材料として、この酵母の生活環におけるミトコンドリア核様体の動態の解析および、ミトコンドリア核様体の単離法、ミトコンドリアDNA結合タンパク質の解析も行いたいと計画している。S. pombeにおけるCmb1欠損の影響についても引き続き解析する。
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Causes of Carryover |
平成27年度からの次年度繰り越し額があり、また、平成28年度には現有装置の故障等の費用がかからず校費を使用することもできたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、酵素、薬品、ガラス器具などの物品費、旅費、論文投稿料、英文校正料などの経費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)