2015 Fiscal Year Research-status Report
種分化研究の基盤整備に向けたニホンヤモリ種群の分類および全種系統樹の作成
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15K07192
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
戸田 守 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (40378534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 種分類 / 分子系統 / 東アジア / 爬虫類 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年6月にベトナム,同7月に中国を訪れ,ニホンヤモリ種群の分布調査と標本採集,両国の研究機関で標本の観察を行った.その結果,暫定8種を確認・入手することができ,両国の共同研究者とともに進めている分類および分子系統解析に必要な材料を揃え終わった. 分布に関しては,1)台湾の離島から知られている暫定未記載種は大陸中国にはおそらく分布しないこと,2)福建省南澳島には確かにG. subpalmatus が分布すること,3)G. chinensisは予想外に北方まで分布することなどが明らかになった.また,日本国内の既存のサンプルと併せてミトコンドリアDNAの塩基配列情報を分析し,種間の系統推定を行ったところ,一部未解決な点を残しながらも,本種群全体の系統を描くことができた.これにより,日本や台湾で見つかっている暫定未記載種の種としての独立性が改めて示され,形態形質の比較と併せ,その多くについて記載に踏み切る準備が整った.一方,種分類に関して新たに見いだされた問題点として,中国東部から中央部にかけて分布するG. subpalmatusとG. melliの分類学的関係が曖昧であること,中国南東部のG. chinensisとG. similignum,G. palmatusの関係について再検討の必要性があること,3)G. palmatusと呼ばれている集団の中に複数の種が含まれている可能性があることなどが分かった.また,ミトコンドリア系統樹に基づく限り,本種群はベトナムなど分布の南限付近に起源し,種分化しながら北方に分散し,なかでも東アジア島嶼部への進入が,本種群における分化に深く関係しているというシナリオが見えてきた. これらの成果は,東アジアで高い種多様性を示すヤモリ属の分化・分散の歴史を理解するために重要な基礎を与えるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福建省南澳島のヤモリ集団の分類学的帰属や,台湾の離島の暫定未記載種の地理的分布を確認するとともに,種間系統分析に必要な標本を揃え終え,予備的な分子系統解析を完了するなど,計画はほぼ予定通りに進んでいる.一方,研究の進行に伴って新たな分類学的課題もみつかり,特に,台湾島の暫定未記載種との関係を明確にする必要があったG. subpalmatusに複数の種が含まれている可能性が浮上したことから,前者の記載にはもう少し検討が必要な状況に陥った.とはいえ,上記の福建省南澳島の集団を含めた分子系統解析の結果から,台湾島の暫定未記載種が独立種であることはほぼ確実と考えられ,G. subpalmatusの名で呼ばれている大陸の集団の分類学的帰属を整理したうえで,その記載を行うべきであるという方針が立てられた.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,今年度の調査によってあらためてその独立性が確認された日本と台湾の暫定未記載種について記載を行う.その上で,新たに浮上した2つの分類学的問題,G. chinensisグループの分類とG. subpalmatus-G. melliグループの分類について,分子形質と形態形質の両面から検討を進め,少なくとも種の線引きまでを公表する.種間系統解析に関しては,一部,未解決な点を残しているが,これについては次世代シークエンサーを用いた分析手法を導入する状況が整いつつあるため,これを取り入れて,より大規模な解析を行うことによって解決を図る.九州で飛び地分布するヤモリ集団の起源の推定に関しては,予定通り,分布調査とサンプリングを進め,マイクロサテライト解析を行う.
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Research Products
(3 results)