2016 Fiscal Year Research-status Report
植物群集における双翅目ポリネーターの生態系機能評価:訪花行動と花粉流動の解析から
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15K07216
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石井 博 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (90463885)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 双翅目 / ハエ目 / ポリネーター / 送粉者 / 花色 / アビスコ国立公園 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
スウェーデンの北極圏にあるアビスコ国立公園の、高山帯と亜高山帯、および北アルプス立山の高山帯(室堂~浄土山周辺)で、植物群集の開花フェノロジーを記載するとともに、ポリネーターの体表花粉及び柱頭付着花粉の分析、各植物種を利用する訪花昆虫の調査、訪花昆虫の形態および 花の形質の調査を行った。これらの結果を、これまでの調査で得た、ニュージーランドの高山帯、およびモンゴルの半乾燥高原草原のデータと比較した。その結果、双翅目訪花者の割合が多い地域ほど、植物群集における花形質(花色および形態)の多様性が低くなる傾向が見出された。また、同一地域内であれば、双翅目訪花者が利用する植物種のほうが、それ以外の訪花者分類群(膜翅目と鱗翅目)が利用する植物種よりも、概して花形質の多様性が低いことがわかった。ただし、双翅目訪花者を分類群ごとにわけて解析したところ、分類群ごとに異なる選択的な訪花パターンを示した。これは、昨年に行った、パントラップの結果と整合性のある結果であった。 ポリネーターによる選択的な訪花行動は、植物種の多種共存を支える重要な性質である。一般に双翅目ポリネーターの多くはジェネラリストとして扱われ、膜翅目ポリネーターや鳥類ポリネーターなどに比べ、生態系サービスの観点からは評価が低い傾向にある。今回の結果からは、これまでの評価に一定の妥当性はあるものの、双翅目ポリネーターが多様であることも、地域の植物の多様性に貢献しうることが示唆された。また、双翅目ポリネーターを分類群ごとに分けて評価する重要性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
訪花昆虫の形態および花形質の調査、ポリネーターの体表花粉及び柱頭付着花粉の分析などは、当初の予定通り、おおむね順調に進んでいる。ただし、スウェーデンの調査では、10年に1度クラスの天候の不順のため、思うように訪花昆虫の調査が出来ず、訪花昆虫の観察数は、目標の2/3程度に留まった。こうしたことから、総じて、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、当初の予定通り、27年度に立山で行った調査を継続して行うとともに、これまでの調査地とは異なる送粉者群集であることが期待される長野県の菅平高原でも調査を行う。具体的には、植物群集の開花フェノロジーを記載するとともに、ポリネーターの体表花粉及び柱頭付着花粉の分析、各植物種を利用する訪花昆虫の調査、訪花昆虫の形態の調査、花の形質(花色・花形態)の調査、双翅目ポリネーターの株間・株内の移動パターンの観察を行う。花色の測定に関しては、分光器を用いて、花弁の反射スペクトルを測定することで行う。これまでの調査地域(ニュージーランド高山帯、モンゴルの高原草原、スウェーデン北極圏の高山帯および亜高山帯、富山県立山の高山帯、長野県の菅平高原)の結果を比較し、双翅目送粉者が植物群集に与える影響を評価する。得られた成果を論文にまとめ出版する。
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Research Products
(5 results)