2016 Fiscal Year Research-status Report
土壌乾燥ストレス強度制御システムの構築とストレス下の植物の成長制御機構の解析
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15K07254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸高 大輔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10533995)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 乾燥ストレス / 土壌水分含量 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は、乾燥ストレスによって地上部の生育が抑制されてしまう。乾燥ストレス条件下における生育の影響を調べるためには、すぐに枯死してしまうような急激な強いストレスを与えるのではなく、乾燥ストレスの強度を調節して穏やかな強度のストレスを与えることが重要である。前年度までに、土壌水分含量を示す指標として土壌の種類の影響を受けないpF値を用いて、土壌水分含量制御装置の構築に取り組んだ。土壌水分含量の制御は、pFセンサーにより土壌中のpF値を連続的にモニタリングし、予め設定したpF値を超過した際には水道管に設置した電磁弁に信号を送り弁を開いて一定時間潅水することで行った。本年度は前年度に引き続き、この構築した制御装置を用いてpF2.0、pF2.5、pF3.5という異なるpF値の条件下でイネ幼植物体を生育させ、葉の成長の変化の観察や代謝産物の解析を行った。pF2.0の条件下での葉の成長は、コントロール条件下と比べ違いは見られなかった。pF2.5、pF3.5の条件下では葉の成長遅延が見られ、ストレス強度のより強いpF3.5の条件下でより顕著な成長遅延が見られた。光合成の影響について調べるため、光合成の指標の一つであるFv/Fm値を測定した。測定の結果、pF2.0、pF2.5、pF3.5の条件下で生育させたイネのFv/Fm値は、コントロール条件下と比べ差はなかった。また、よりストレス強度の強い乾燥ストレスとして、途中から潅水を完全に停止させた処理を施し、Fv/Fm値を測定した結果、コントロール条件下と比べ著しい減少が見られた。pF3.5の条件下で生育させたイネおよび途中から潅水を完全に停止させた処理を施したイネの糖の含量は増加した。pF3.5の条件下で生育させたイネのアミノ酸の含量は変化しなかったが、途中から潅水を完全に停止させた処理を施したイネのアミノ酸の含量は増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に構築した土壌水分含量制御装置を用いて乾燥ストレス強度の異なる生育条件下でイネを生育させ、光合成の影響や代謝産物の含量について解析を行った。その結果、コントロール条件下で生育させたイネと比べさまざまなストレス強度で生育イネでは有意に異なる値が得られた。従って、乾燥ストレス強度の異なる生育条件下で生育させたイネ中の遺伝子発現応答に関しての解析において、光合成の影響や代謝産物の解析で得られた結果を裏付けることや、新しい発現変動遺伝子を見出すことが十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、乾燥ストレス強度の異なる生育条件下で生育させたイネ中の遺伝子発現応答に関して解析を進める。乾燥ストレス強度の異なる生育条件下で生育させたイネの地上部よりRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行う。マイクロアレイ解析により、光合成の影響や代謝産物の解析で得られた結果を裏付け、また、新しい発現変動遺伝子を見出す。
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Causes of Carryover |
土壌水分含量制御装置の構築が順調に進み、検討要項が減ったため。特にセンサー部分に関して当初の期待通りの精度や反応性が得られたため、装置の構築に関わる費用が節約された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が生じたことにより、分子生物学的な解析をより深く進めることができる。マイクロアレイ解析やRNAseq解析などの網羅的な遺伝子発現解析や、ホルモノーム解析、メタボローム解析などの分子生物学的な解析を実施する。
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Research Products
(1 results)