2016 Fiscal Year Research-status Report
トマトの生理障害「つやなし果」の発生機構の解明と選果方法の開発に関する研究
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15K07282
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西澤 隆 山形大学, 農学部, 教授 (10208176)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | つやなし果 / Microcracking / トマト / クチクラ / 膨圧 / 細胞肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.トマトの「つやなし果」は,果皮表面に分布するクチクラに微細な亀裂ができる生理障害である.果実の形態と「つやなし果」の発生との関係をミニトマト4品種を用いて調べた結果,「つやなし果」全体の発生率は‘ロッソナポリタン’(88%)が最も高く,発生程度「強」に分類される果実の割合(65%)も高い傾向を示したが,強/弱比は発生率が最も低い‘キャロルパッション’が最も高い値を示した.この結果から,果実が縦長であるほど「つやなし果」が発生し易い傾向が認められた.また,4日間の貯蔵期間中「強」の果実の水分減少率は10~16%に達した.「つやなし果」の表皮面積は正常果に比べ大きく,果実肥大期に急激な細胞肥大が生じると表皮面積当りのクチクラ量が減少し,クチクラの構造が破壊されるものと考えられた. 2.環境ストレスがトマトの「つやなし果」発生に及ぼす影響を調べた.‘ミニキャロル’を供試し,10 mmの果実に果房冷却,UV-A+B照射,水ストレス処理を行った場合,果房冷却区で30%の果実に発生が認められた.‘麗容’および‘桃太郎ファイト’を供試し,5および20 mmの果実に株冷却,水ストレス処理を行った場合,5 mmの果実では対照区のみに,20 mmの果実では‘麗容’が対照区で,‘桃太郎ファイト’が株冷却区で10%以上の果実に発生が認められた.しかし,どの処理区でも多くの果実は正常であったことから,本実験で行った以外の要因が「つやなし果」発生の主要因として作用しているものと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トマトの「つやなし果」は,クチクラ表面にのみ生じるMicrocrackingであることを明らかにした.電子顕微鏡を用いて詳細に調べた結果,「つやなし果」の傷は果実肥大期に始まるが,果実成熟期にかけて傷が深くなるのではなく,同程度の傷の数が増えることで発達することを明らかにした.また,果実成熟期における水分蒸散と傷の面積との関係は必ずしも有意な相関がないことから,クチクラが部分的に修復されているものと推定された.また,微細な凹凸ではあるが,レーザーを用いることにより判別できることが示唆された.こうした結果は,平成28年度の園芸学会東北支部会,平成29年度の園芸学会で発表し,今年度は国際学会でも発表できる予定であることから,概ね順調に進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
トマトの「つやなし果」の発生要因については,水ストレス,冷却処理,UV-B処理などを行ったが,どの処理に対しても一定の効果は得られないことから,環境要因以外の要因が主要因として働いている可能性が示唆された.トマトの果皮表面のクチンには細胞壁の多糖繊維が入り込んでいるが,トマトは生育後期になると微量要素の欠乏障害が出やすいことから,ホウ素などの微量要素の欠乏が要因となって,クチン-細胞壁ネットワークが障害を受けるか,あるいはワックスを含むクチクラ全体の生合成が直接障害を受けるために微細な傷が拡大しやすくなる可能性がある.そのため本年では,クチクラに亀裂を生じさせる要因について明らかにすることにより,「つやなし果」の全体像を解明する.
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Research Products
(3 results)