2015 Fiscal Year Research-status Report
レタス植物体中におけるクロロゲン酸含有量を増大させる明期延長型照明処理法の開発
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15K07284
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福田 直也 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80251023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 英生 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40729852)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 青色光 / クロロゲン酸 / 高蓄積 / 二酸化炭素濃度 / 連続照明 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸を高含有するレタスを栽培するための最適環境条件を模索するため,生育時の光強度,光質ならびに二酸化炭素濃度といった環境要因に着目し,各環境要素がクロロゲン酸蓄積に及ぼす影響を評価すべく試験を行った.本葉展開後の幼植物体におけるクロロゲン酸蓄積に関する光質ならびに光強度の相互作用を評価したところ,連続照明による刺激の他に,①最適な光強度は200umol・m-2・s-1(PPFD)であり,さらに②光質については青色光波長域を含む約400~500nmの領域が,レタス植物体地上部におけるクロロゲン酸蓄積を促進するために有効であることが明らかとなった.また二酸化炭素濃度は,連続照明との相互作用により1000ppmの処理濃度ではクロロゲン酸蓄積に促進的に作用することが判明した.これらの条件を組み合わせた処理を行ったところ,最終的にレタス幼植物体中のクロロゲン酸濃度が200mg・100gfw-1に達し,対照区のレタスに含まれるクロロゲン酸濃度の約20倍の濃度となった.また,収穫前に一時的に行う連続照明ならびに二酸化炭素処理は,レタスのクロロゲン酸蓄積に効果があったことから,収穫直前のプレハーベスト処理によるクロロゲン酸蓄積促進技術の可能性も示唆された. 一方,1500ppmを超える二酸化炭素濃度となると,クロロゲン酸蓄積に阻害的な働きがあることが示唆され,更に300umol・m-2・s-1(PPFD)の高光強度条件で連続照明を行った場合も,高濃度二酸化炭素施与と相互的に作用してクロロゲン酸蓄積を制限した. 以上の本年度の結果より,レタスにおいてクロロゲン酸を地上部に蓄積させるための連続照明における光強度ならびに光質,二酸化炭素濃度の諸条件を特定することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,連続照明条件下においてレタスのクロロゲン酸含有量が増大するという性質を利用した植物工場での高機能性野菜生産技術を開発するとともに,その蓄積メカニズムを解明することを目的としている.初年度は,クロロゲン酸を安定的に高蓄積できるレタスの栽培環境条件について,光強度,光周期,光質ならびに二酸化炭素などの環境条件のスクリーニングを行うこととしたが,その結果,環境条件の調整により目標値である50mg・100gfw-1を大きく上回る200mg・100gfw-1の蓄積量を達成することに成功した.また,レタスにおけるクロロゲン酸蓄積を阻害する環境要因についても明らかにすることができており,安定したクロロゲン酸蓄積に向けた知見を十分に得られたものと判断した.以上より,研究進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては,実用技術を目指して異なるレタス品種でのクロロゲン酸蓄積応答反応の確認を行うとともに,その蓄積メカニズムの解明を行うために,クロロゲン酸高蓄積環境条件の下,レタス植物体内代謝産物の網羅的解析を行う. 1.非結球レタス数品種に関するクロロゲン酸含有量高蓄積条件での応答反応評価 完全人工光型植物工場での生産を前提として,クロロゲン酸を高蓄積させるためのプロトコールを目指して,更に品種を増やした上での試験が必要である.ここでは,‘ノーチップ’など植物工場で生産されることが多い品種群を,形態的特性やチップバーン耐性などを基準として選抜拡充し,前年度にスクリーニングした環境条件での栽培試験によりクロロゲン酸蓄積効果を比較する. 2.クロロゲン酸高濃度蓄積環境条件におけるレタスの代謝産物網羅的解析 標準的な栽培条件と,ここまでの試験において解明したクロロゲン酸高蓄積条件においてレタスを栽培し,定期的に植物体を採取した上で糖類・アミノ酸類・有機酸類・脂質類ならびに,ポリフェノール類,各種色素(カロテン,リコピン等),各種ビタミン類,各種植物ホルモンについて解析を実施し,前年度に明らかにした高クロロゲン酸蓄積条件での生理的メカニズムに関する知見を得る.
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Causes of Carryover |
当初購入予定であったLED光源などの物物品費について,協力企業から無償での借用が可能となり,その分の物品については,LED光源などの資材として次年度購入することとしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由より,当初購入予定であったLED光源などの物品に関して,今年度に購入するものとするが,更に,今年度計画において実施予定の代謝産物解析にかかる経費としても一部使用することとする.
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Research Products
(2 results)