2016 Fiscal Year Research-status Report
レタス植物体中におけるクロロゲン酸含有量を増大させる明期延長型照明処理法の開発
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15K07284
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福田 直也 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80251023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 英生 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40729852) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レタス類 / クロロゲン酸蓄積 / 機能性 / 連続照明 / 青色光 / 根域制限 / 二酸化炭素処理 / 塩類ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性ポリフェノールであるクロロゲン酸高含有レタスの栽培技術開発を行っている。前年度試験の結果、青色光を含む光源による連続照明ならびに二酸化炭素施与処理を組み合わせることによって、レタスにおいて当初目標を大きく上回る200mg・100gf.w.-1を超えるクロロゲン酸蓄積濃度を達成することに成功した。本年度は特許の取得を目指して、クロロゲン酸蓄積効果の安定性向上と更なる高濃度蓄積効果を達成するための地上部環境条件および根域ストレス条件の検討を進めた。 連続照明処理と二酸化炭素施与処理を行う際の養液栽培培地条件について検討を行ったところ、根域容量を小型ウレタンブロックサイズに制限した場合に植物体内のクロロゲン酸蓄積濃度が安定することが示された。また、地上部乾物率と乾物当たりのクロロゲン酸濃度の処理後の変動を比較した際、根域容量の制限処理を行った上で連続照明ならびに二酸化炭素施与処理を行った場合、地上部乾物率の上昇と乾物当たりのクロロゲン酸濃度の増加が合わさった乗数効果によって飛躍的にクロロゲン酸がレタス植物体内に蓄積することが示された。この結果については、平成28年度園芸学会秋季大会において発表し、さらにこの成果発表後に本技術の特許申請を行った(特願2016-175465)。その後、特許申請を補完するためのデータ採取を進め、光周期を段階的に変化させた場合の評価を行い、結果としては暗期を設けない連続照明がレタスにおけるクロロゲン酸蓄積に最も効果が高いことを証明し、本技術の優位性を示すことに成功した。 加えて、より高いクロロゲン酸蓄積効果を目指した根圏に対する塩類ストレス処理試験を行ったところ、100mMの塩化ナトリウムを添加した培養液で栽培した結果、当初のチャンピオンデータを大きく上回る500mg・100gf.w.-1のクロロゲン酸蓄積量を達成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究申請時において当初は、レタスにおけるクロロゲン酸蓄積目標についてはレタス100gを摂取した場合に、健康機能性が得られるとされている少なくともコーヒー3杯分に相当する50mg以上のクロロゲン酸を摂取できることとしていた。しかしながら、本年度までの研究成果によって、クロロゲン酸蓄積の最新チャンピオンデータが500mg・100gf.w.-1に達しており、当初設定していたクロロゲン酸摂取量を、10g程度という少量のレタス摂取により達成できる可能性が示された。このように、本技術では、連続照明処理や二酸化炭素施与処理ならびに根域のストレス処理などの組み合わせによりレタスの商品価値を飛躍的に高めることに成功しており、現在申請中の特許によって本研究の成果を高機能性レタスの生産技術として普及させる可能性があるものと判断している。 なお、本年度の当初検討予定であったメタボローム解析によるクロロゲン酸高蓄積メカニズムの解明については、チャンピオンデータが得られた処理条件において解析用サンプル採取試験を予定通り実施し、連携研究者である草野都教授の指導によって分析を進めており、その最終結果を待っている状況となっている。また、昨年度予定していたレタスの品種別クロロゲン酸蓄積傾向の解析については、特許申請のためのデータ採取を優先し次年度に実施することした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては、昨年度は特許申請のためのデータ採取を優先したため実施しなかった品種別のクロロゲン酸蓄積処理効果の確認を行う。更に、メタボローム解析結果をもとに、クロロゲン酸蓄積処理効果のメカニズム解析を、海外研究協力者であるOlsen教授や連携研究者である草野教授とともに進め本技術の他作目への応用も含めた検討を進める。 1.非結球性レタス数品種に関するクロロゲン酸高蓄積条件での応答反応評価:完全人工光型植物工場での生産を前提として、クロロゲン酸を高蓄積させる技術を確立させることを目的に、形態的特徴や生育特性が異なる非結球性レタス数品種についてこれまで得られたチャンピオンデータ条件での栽培試験を行い、他品種における処理効果の検証を行う。 2.メタボローム解析結果についての検証とクロロゲン酸高蓄積メカニズムの考察:前年度のサンプル解析結果を基に、各種糖類や有機酸、ポリフェノール類などの代謝について考察を行い、連続照明処理によるクロロゲン酸高蓄積メカニズムについて考察する。 3.クロロゲン酸高蓄積技術の実用化に向けた生産物貯蔵試験:クロロゲン酸高蓄積処理技術によって生産したレタス類に関して、冷蔵貯蔵を行った場合のクロロゲン酸濃度の安定性について評価し、貯蔵温度を変化させた際の影響を評価しコールドチェーンによる高機能性野菜の輸送可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度より実施しているクロロゲン酸蓄積に関係するメタボローム解析について、民間企業への委託ではなく、連携研究者である草野教授の協力を受けて共同研究の形で実施したため計上していた試薬などの費用について不要となった部分が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
メタボローム解析について、共同研究での委託では難しい分析内容があり、その部分については民間企業の解析サービスを活用することになることから、そのための経費として使用する。
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Research Products
(2 results)