2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌のスペルミジン異化経路の解明~バイオフィルム制御とポリアミン生産に向けて
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15K07357
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 秀之 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (10202136)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スペルミジン / プトレッシン / アセチルスペルミジン / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
Polyaminepakカラムを用いたHPLC分析により、プトレッシン生合成酵素であるSpeAB, SpeC, SpeF欠損株の菌体内には、保持時間9分のカダベリンのピーク以外に、野生株には見られない保持時間17分のピークが観察された。上記欠損株はアミノプロピル基転移酵素であるSpeEは正常であるため、このピークは、プトレッシンよりメチレン基が1つ多いカダベリンにアミノプロピル基が転移されたアミノプロピルカダベリンである予想した。 上記欠損株をさらにリジンデカルボキシラーゼであるLdcC, CadA欠損にしたところ17分のピークは消失し、プラスミドでldcC, cadA遺伝子を相補したところ17分のピークが再び出現した。また、SpeAB, SpeC, SpeF欠損株をSpeE欠損にしたところ17分のピークは消失し、プラスミドでspeE遺伝子を相補したところ17分のピークが再び出現した。以上は、17分のピークがアミノプロピルカダベリンであることを強く示唆する結果である。 アミノプロピルカダベリンは市販されておらずアミンファーマ研究所より供与を受けHPLC分析に供したところ保持時間17分のピークが観察された。 さらにGC-MS分析により、SpeAB, SpeC, SpeF欠損株の菌体内にアミノプロピルカダベリンと同じ保持時間にピークを確認し、そのマススペクトルをアミノプロピルカダベリンの標準品のものと比較したところ、極めてよく一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸菌はポリアミンオキシダーゼを持っていないことを示すデータが得られている。しかし、プトレッシンを全く生合成できない菌株を作成し使用したが、試薬として購入し菌体外から与えているスペルミジンにごくわずかであるがプトレッシンがコンタミしていることが判明した。HPLC分析により、ナカライテスク社製では、0.062%、Sigma社製は0.60%のプトレッシンが混在していた。割合としては極めてわずかではあるが、菌体外から与えたスペルミジンを取り込み、余分なスペルミジンをアセチルスペルミジンに変換した後、スペルミジンオキシダーゼがあればプトレッシンにすると考えている。もし、大腸菌が活性の強いスペルミジンオキシダーゼを持っていれば、著量のプトレッシンを蓄積するため判別は容易であるが、実験の結果、コンタミとしてスペルミジンに含まれている程度のプトレッシンを検出した。そのため、大腸菌はスペルミジンオキシダーゼを持っていないとまでは断定できずにいる。
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Strategy for Future Research Activity |
N8-アセチルスペルミジンはFluka社から販売されている。分析の結果、スペルミジンを1.73%含んでいたが、プトレッシンは検出限界以下であった。そこで、これまでのスペルミジンに替えて、N8-アセチルスペルミジンを培地に添加し、プトレッシンの生成を調べることにした。
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Causes of Carryover |
研究初年度に比べると2年目は順調に研究が推移したが、初年度で生じた遅れをまだ充分に取り戻せていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度中にこれまでの遅れを取り戻し、当初計画通りの予算使用を行う計画である。
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