2015 Fiscal Year Research-status Report
フィトエストロゲン代謝菌の機能性に及ぼす植物性乳酸菌の影響の解明
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15K07450
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
田村 基 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門食品健康機能研究領域, 主席研究員 (70353943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 博之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門食品安全研究領域, 主任研究員 (30308192)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物性乳酸菌 / イソフラボン / エコール |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、新たに漬物から植物性乳酸菌を分離した。ぬか漬けにつけたキュウリ、生姜、昆布をアルコール滅菌したカミソリで細かくカットし、滅菌生理食塩水に懸濁し、この懸濁液を滅菌生理食塩水で段階希釈し、2%NaCl-1%CaCO3-MRS寒天培地に希釈液を接種し、30℃でアネロパックによる嫌気培養をおこなった。培地に生育したコロニーをそれぞれ2%NaCl-1%CaCO3-MRS寒天培地に再度接種し、酸産生によるCaCO3の可溶化を目安にして植物性乳酸菌のプレスクリーニングを行った。このMRS培地においてCaCO3が可溶化した菌を単離し、菌のDNAを抽出し、16S rDNAを解析し、分離菌の同定を行ったところ、ぬか漬けから分離した菌の多くは乳酸菌に属していた。キュウリ由来乳酸菌7株と生姜由来3株、昆布由来14株を、MRS寒天培地で24時間培養し、それぞれをエコール産生菌TM-30株と混合嫌気培養し、ダイゼインからのエコール産生性を比較したところ、TM-30株のエコール産生性は、共存する乳酸菌によって2倍近くの違いが認められた。この違いは、分離した食品源の違いというよりも菌の性質による違いによるものと推察された。また、これまでに研究担当者が漬物から分離し、保存していた植物性乳酸菌についても、エコール産生菌TM-30株と植物性乳酸菌とを混合嫌気培養し、ダイゼインからのエコール産生性を比較したところ、TM-30株のエコール産生性は、共存する乳酸菌によって1.5倍近く違いが認められた。エコール産生菌TM-30株と共に培養する植物性乳酸菌の種類の違いが、エコール産生菌TM-30株のエコール産生性に異なる影響を及ぼす結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進んでいる。今回の試験では、予定通り植物性乳酸菌を漬物から分離することができた。また、分離した植物性乳酸菌や以前に分離した植物性乳酸菌は同じ乳酸菌であるにも関わらず、エコール産生菌TM-30株のダイゼインからのエコール産生に異なる影響を及ぼすことを見出した。このことは、植物性乳酸菌の中には、エコール産生に関連する可能性を有する菌が存在するということであり、もしも、エコール産生性を高めるような植物性乳酸菌を同定できれば、植物性乳酸菌の新たな活用方法を提案することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、in vitroの培養試験において、エコール産生菌TM-30株のエコール産生性に植物性乳酸菌が影響を及ぼした。今後は、さらに種々の植物性乳酸菌を分離して、今回の結果を検証していく。現在、ぬか床に漬け込んだダイコンの葉をサンプルとして、2%NaCl-1%CaCO3-MRS寒天培地にサンプル希釈液を接種し、30℃でアネロパックによる嫌気培養を行い、培地に生育したコロニーを2%NaCl-1%CaCO3-MRS寒天培地に再度接種し、酸産生によるCaCO3の可溶化を目安にして植物性乳酸菌のプレスクリーニングを行っている。これらダイコンの葉由来の菌が乳酸菌である場合は、これらの分離した植物性乳酸菌がエコール産生菌TM-30株のエコール産生性に及ぼす影響を検討する。また、これまでに分離した植物性乳酸菌の中でエコール産生菌TM-30株のエコール産生性に影響する可能性のある植物乳酸菌をマウスに経口投与して、対照群には生理食塩水を投与する。全てのマウスには同一のイソフラボン添加飼料を給餌する。一定期間飼育後、尿中イソフラボン類濃度を測定し、植物性乳酸菌投与がマウスのエコール産生に及ぼす影響を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は次年度使用額と併せて消耗品の購入に利用し、効果的な予算運用を行う。
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