2015 Fiscal Year Research-status Report
麹菌アクリルアミド代謝遺伝子群の解明と実用麹菌での効率的育種法の研究
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15K07463
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾関 健二 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (40410287)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食品機能 / 食品化学 / 食品安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体飲料中(例えばコーヒー)の焙煎時に生成するアクリルアミド(AA)を分解可能な麹菌アミダーゼ遺伝子を高生産するセルフクローニング麹菌は育種済みである。これまでにAA高生産麹菌を利用したコーヒー中のアクリルアミド分解では、次の分解物であるアクリル酸(AS)が生産され、この物質はAA以上に麹菌には毒性物質として働き、分解が滞ってしまう。そこでAS分解に関連する候補遺伝子を数種類まで絞込み、その中で一番候補遺伝子については、アミダーゼ高生産プラスアクリル酸分解候補遺伝子高生産の共発現麹菌の育種に成功した。 H27年度は、これらの育種麹菌のAAとASに対する分解効率の評価とこれまでの研究では麹菌の菌体処理によるAA分解の効率的手法を検討し、その中で固定化菌体を利用する方法が、繰り返し処理に合致する方法であることを見出し、乾燥状態では平板となっているセルローススポンジを利用し、麹菌の胞子懸濁液を分散し、セルローススポンジの立方体に膨らむ際、胞子がセルロース内部に入り込み、栄養培地で一定時間培養し、発芽した胞子からの菌糸をゆっくり絡ませる、足場をしっかり固定したセルロース菌体の培養条件をほぼ確立できた。その後の液体培養でセルロース担体周辺に菌体が覆い、まりも状の固定化担体を作成した。この菌体を用いてAAの低減化を行い、その後洗浄し栄養培地で培養し、まりも状の固定化担体を繰り返し再利用する培養条件を検討した。これにより固定化担体が繰り返し利用でき廃棄物削減の技術開発に目途がついた。 AS分解候補遺伝子の絞り込みでは、アミダーゼとこの候補遺伝子の共発現がAS分解に関して、水およびコーヒー中での分解効率が高くなることを見出し、AS分解候補遺伝子がAS分解に関与する遺伝子であることを解明した。この株を利用して水およびコーヒー中のASの分解が早まることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固定化セルロース担体に麹菌を成育させる手法は、担体内部の麹菌胞子を入り込ませ、必要最小限の栄養培地で一定時間、比較的低温で発芽をゆっくりさせ菌体を担体に絡みつき易い培養条件をほぼ確立でき、菌体でAAおよびASの低減化試験により、まりも状であった担体の外側の菌体が剥がれても、栄養内地の戻すことにより内部の足場の菌体を再利用して、繰り返しまりも状に固定化担体の再利用できる培養条件を確立することができた。 アミダーゼ高生産のアクリル酸分解候補遺伝子の共発現麹菌は、ASの分解効率が高まる結果が取得でき、AS分解に関わる遺伝子であることを確認できた。但しこの遺伝子単独だけではなく、他にもAS分解に関わる遺伝子がある可能性あるとも考えられる。この点当初の研究実施計画からは予想できなかった点である。
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Strategy for Future Research Activity |
アミダーゼ高生産麹菌はセルフクローニングの麹菌だけのベクター構成であるので、我々のオリジナルのデンプン質除去小麦フスマ培地で窒素源などを加えると、デンプン質除去していないフスマ培養に近い麹菌の生育旺盛な環境に戻すことができることが分かっている。この培養条件ではアミラーゼ系酵素を分泌生産しないので、今年度はアミダーゼの食品加工用の酵素剤への検討として、上記培養によりアミダーゼが抽出生産可能かどうか、高純度生産可能かどうかなど評価したいと考えている。 上記の生産量を見て今後の研究方針を決定する。
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Causes of Carryover |
8669円の消耗品費が余剰した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入に充てる。
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