2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K07468
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
幸田 圭一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80322840)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミズナラ / リグニン / メトキシ基 / ニトロベンゼン酸化法 / 緑葉 / 落葉 / 葉脈 / 葉肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、必要な分析機器、特に本研究で中核的な武器となるガスクロマトグラフ分析システム一式を予算内で購入し、当面必要な実験環境を整備した。しかし、当初予定していた多くの樹種の葉の収拾については適切な時期にサンプリングができなかったため、研究協力者の助言を受け、次年度に行なうこととした。そこで代わりに初年度では、本来は派生的な課題ながら、本研究で提案した分析手法の根幹部分に関わる検討を進めることにした。比較的短期間で一定の成果を得ることが期待できたからである。すなわち、これまでに十分な量の試料を確保済みで、研究を進めてきたミズナラの葉に対象を限定し、葉肉ならびに葉脈に切り分け、部位別のリグニンの相違について明らかにすることを目的とする基礎的な課題に取り組んだ。本研究ではリグニンの定量を、メトキシ基の定量値とニトロベンゼン酸化生成物の比率に関する情報から算出する。これまでの知見から、リグニンの定量値に最も大きく影響するメトキシ基の定量法については試料の前処理段階における溶媒抽出の影響を受けないことがわかっており、そのため、他の従来法よりも再現性良く、かつ、妨害物質の影響を受けにくいリグニン定量法であることが示されている。しかし、ニトロベンゼン酸化法に関しては溶媒抽出の影響を受ける可能性が高かったため、この点をまず検証した。溶媒抽出を行なわない葉は、部位によらず、リグニン基本骨格であるp-ヒドロキシフェニル核(以下H核)、グアイアシル核(G核)、シリンギル核(S核)のうち、H核の定量値が大きく出ることがわかり、抽出成分がニトロベンゼン酸化法に影響することが確認され、ニトロベンゼン酸化法に関しては溶媒抽出が必須であることが示された。次に今年度の研究の本題である部位によるリグニンの違いについて、水分通導組織である葉脈部位では葉肉部位よりもリグニン含有率が高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多くの樹種の葉の収拾については予定通りには進まず、適切な時期にサンプリングができなかったため、研究協力者の助言を受け、次年度、別の研究プロジェクトにおいてサンプリングが確実に行なえる時期に実施することとした。なお、このサンプリングの遅延の影響で、回収した落葉を用いたH28年度以降の研究計画にも遅延が生じるが、一方で現在手持ちの試料で実施可能であり、H29年度に実施予定だった別の基礎的で重要な課題を前倒しして進めることで、手順は前後するものの、全期間に渡る遅れの低減を計った。
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Strategy for Future Research Activity |
申請段階での研究計画とは手順が前後したが、今年度(H28年度)はH27年度に実施予定だった樹木の葉の野外サンプリングとチオグリコール酸法などによるリグニンの単離を順次進めていく。また、申請者が開発した定量法により、単離リグニンの純度についても検証する。このプロセスは非常に時間がかかるため、次年度にもまたがる可能性が高いが、本研究の基本部分である定量法の信頼性に深く関わるため、慎重に行う。また、同時並行的に、サンプリングした試料については乾燥後、本題である生分解実験にも入っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初、「ガスクロマトグラフ分析システム一式」と「試料粉砕機」の購入を初年度に予定していたが、申請額について、前者は定価ベースではなく、割引価格ベースであった。採択後、申請額のうち7割程度しか認められなかったため、「ガスクロマトグラフ分析システム一式」の購入を優先し、「試料粉砕機」購入を見合わせた。その結果、一定額の残余金が生じた。その一部については学会大会への参加など、初年度の情報収集費用(旅費)に充てた。なお、この「試料粉砕機」について、研究協力者が別の研究費により購入を予定しているため、また、研究課題を進める順番を入れ替えたため、現在のところ、研究遂行にあたり特に支障は生じていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当面は「試料粉砕機」を本科研費で購入する必要性や緊急性が薄くなったため、残余金については、初年度に行なえなかった落葉試料のサンプリングに関わる移動交通費(レンタカー代等)に充当する予定である。
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