2016 Fiscal Year Research-status Report
木材の年輪構造が直交集成板ラミナのローリングシア強度に与える影響
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15K07521
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
宇京 斉一郎 国立研究開発法人森林総合研究所, 構造利用研究領域, 主任研究員 (70455260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新藤 健太 国立研究開発法人森林総合研究所, 複合材料研究領域, 主任研究員 (10414484)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 直交集成板 / ひき板 / アスペクト比 |
Outline of Annual Research Achievements |
直交集成板(CLT)を構成するひき板(ラミナ)の木口断面の厚さに対する幅の比(アスペクト比)、および、断面に出現する年輪パターンがローリングシアのせん断弾性係数およびせん断強度に与える影響を明らかにするために、単一のラミナを直接せん断変形させる試験を行った。昨年度は、鉄板2枚でラミナ試験片を挟み込んで接着し、鉄板を相互にずらすように加力することでラミナにせん断力を作用させる試験を行った。今年度も同様の加力方式を用いたが、欧州規格(EN 408)のせん断試験法を参考に鉄板を広葉樹材に代替した試験を行った。 ラミナの厚さを固定し、幅を変化させることでアスペクト比を変化させた試験片を、同一のスギ材からエンドマッチで採取した。ラミナ木口に出現する年輪パターンについては、CLTの製造で実際に出現するパターンが含まれるよう、非破壊試験によりヤング係数や密度が明らかとなった母集団から、木口断面に髄を含むものや、年輪の曲率が異なるものが含まれるよう選別した。 アスペクト比の異なる試験体グループで比較すると、アスペクト比が大きくなるとローリングシアのせん断弾性係数およびせん断強度の平均値が増加する傾向がみられた。同一の材から採取した個々の試験体の結果についてみると、アスペクト比と弾性係数および強度との関係が明確でない場合もあり、ラミナ辺に対する年輪の傾斜角や髄からの距離が影響することが推察された。なお、同一の材から採取した試験体であっても、最終的な破断面が、ラミナ中央付近に斜め45度にクラックが入るものと、接着層近傍で破壊するものとが混在し、同一の破壊モードとならない場合がみられた。年輪パターンと併せて破壊モードについても精査する必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、直交集成板を構成するラミナに出現する年輪パターンおよびラミナの寸法の影響をみるために、多数の試験を行う必要があったが、初年度に検討した試験方法の仕様を変更することで、計100体の試験データを得ることができた。試験体の全数において、デジタル画像相関法を用いたひずみ分布観察を行っており、直交集成板のラミナで生じるローリングシアの破壊挙動について様々な年輪パターンでの詳細な分析が可能となった。よって、研究計画は順調に達成されていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ラミナの強度に基づく直交集成板(CLT)のローリングシア破壊強度予測を検討する。当初は、実大CLTの曲げ試験を実施し、ラミナ単体の挙動とラミナが積層された時の挙動とを比較することを目的とした試験を計画していたが、他の研究プロジェクトで実施した実大CLTの試験から、本課題で明らかにしようとしていた知見を得つつある。そこで、次年度は本課題の最終的な目的である、ラミナの強度特性に基づくCLTの強度予測手法の確立を主として取り組み、実大CLTの曲げ試験は、予測手法の適合性の確認のために行う。
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Causes of Carryover |
当初、本研究課題の予算により国際会議への参加を計画していたが、同国際会議にて他のプロジェクトで実施した研究成果を中心に発表することとなったため、他の予算から海外出張費を充当した。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、直交集成板の強度予測のための基礎データとして、本年度実施した試験法を用いてラミナの強度データを得る予定である。試験で必要となる広葉樹材や、画像計測用に取得する画像データのストレージの追加購入に充当する。
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Research Products
(1 results)