2015 Fiscal Year Research-status Report
自由貿易推進体制下における北海道土地利用型農業の競争力強化に関する研究
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15K07595
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東山 寛 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60279502)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | TPP / 土地利用型農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
TPP交渉は2015年10月に大筋合意に至り、2016年2月の署名を経て、協定は成立した段階にある。我が国の農林水産品の関税撤廃率は、HS2007ベースで81.0%、HS2012ベースで82.3%であり、従来のEPAと比べても自由化率は大幅に引き上げられている。北海道農業の基幹部門である稲作(コメ)、畑作(小麦、雑豆、砂糖)、酪農(乳製品)、畜産(牛肉)に即して言えば、①コメはアメリカ・オーストラリアに対する主食用米の特別輸入枠の設定(最終年78,400実トン)、②小麦は国家貿易枠内のマークアップの45%削減、③雑豆は関税割当枠内の関税(10%)の即時撤廃、④砂糖は高糖度粗糖(ハイポール)の調整金削減と加糖調製品の輸入枠設定(最終年9.6万トン)、⑤乳製品はバター・脱脂粉乳のカレント・アクセス枠外の輸入枠(TPP枠)の設定(最終年7万トン・生乳換算)及び一部のナチュラルチーズとホエイの最終的な関税撤廃、⑥牛肉は現行の38.5%から9%までの関税削減、といった譲歩を含む内容となった。関税等の撤廃・削減に伴う価格低下がもたらす農業への影響について、政府試算(19品目)による影響額は計1,516億円(下限値)であるが、このうち牛肉・豚肉・乳製品の畜産3品の影響額が82%を占めており、畜産に被害が集中することが懸念される。加えて、関税等の財源を喪失することは、国内助成(保護)を構成する各種の経営安定対策の財源不足を引き起こし、その安定的運用に支障を来すことも懸念される。本研究の課題は、畑作・酪農を中心として北海道の土地利用型農業の体質強化策を具体的に検討することであるが、初年にあたる2015年度は稲作農家に対するアンケート調査(配付1,000戸)、酪農経営を対象とした地代負担力およびTMRセンターの利用効果、畑作地帯における複数戸法人の設立・運営状況に関する調査研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、畑作・酪農を中心として北海道土地利用型農業の体質強化策を具体的に検討するために、あらかじめ定点的な観測をおこなう調査地点を設定している。①根釧酪農地帯・浜中町、②道東中山間地帯・津別町、③道東畑作地帯・小清水町の3地域であるが、現地関係機関の協力のもと、地域農業全体にかかわる動向の把握と、個別的なトピック(①は高品質生乳生産と農地流動化問題、②はオーガニック酪農とTMRセンター利用、③は農協単位の六次産業化と中規模畑作経営の体質強化)にかかわる調査研究の実施もおおむね順調に推移している。また、水田農業の動向も視野に入れることとし、大規模なアンケート調査を実施することができた(集計・分析は次年度の課題である)。
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Strategy for Future Research Activity |
定点的な観測をおこなう調査地点として設定している、①根釧酪農地帯・浜中町、②道東中山間地帯・津別町、③道東畑作地帯・小清水町の3地域について、継続的な調査研究を実施する。個別的なトピックとして、①の高品質生乳生産と農地流動化問題、②のオーガニック酪農とTMRセンター利用、③の六次産業化と中規模畑作経営の体質強化、という課題設定は変わらないものの、③にかかわる一つの「出口」が複数戸法人化であることから、当該地域も含めて調査研究の対象を拡張することとしたい。具体的には、道東中山間地帯(置戸町)において、2015年10月に約500ヘクタール規模で設立された畑作法人を対象に含める。また、稲作農家を対象に実施したアンケート調査の集計・分析の取りまとめを行う予定である。
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Causes of Carryover |
2016年3月の調査研究旅費として執行済であるが、支払いが4月であるため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年3月の調査研究旅費として支出予定である。
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