2016 Fiscal Year Research-status Report
自由貿易推進体制下における北海道土地利用型農業の競争力強化に関する研究
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15K07595
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東山 寛 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60279502)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | TPP / 自由貿易推進体制 / 畑作農業 / 酪農経営 / 農業所得増大 / 革新技術 / コストダウン |
Outline of Annual Research Achievements |
TPPについては、2016年2月の12カ国による署名を承けて、協定が「成立」している状況には変わりがないが、2017年1月30日にアメリカ政府が「離脱」の意向を正式に通知したことにより、当初の12カ国によるTPP協定は発効が見通せない状況にある。他方、交渉が継続している日EU協定については、農業分野の自由化レベルを少なくとも「TPP並み」と想定していることが伝えられており、加えて、日米間の「二国間貿易」の枠組みに関しても、2017年2月10日の日米首脳会談を承けて、新設する「日米経済対話(ハイレベル対話)」にその具体化が委ねられ、トランプ新政権が重視する「バイ」の枠組み=日米FTAに進展する可能性が否定できない状況である。したがって、本報告の出発点である「自由貿易推進体制」への対応が、我が国および北海道の農業に求められている状況は継続しており、日EU交渉並びに予見し得る日米FTAの農業分野における自由化レベルも、依然としてTPPの合意内容を参照する必要がある。そこで、2016年度においては、①TPP協定の農業分野における合意内容を詳細かつ包括的に検討すると共に、②本研究がフィールドとして設定している北海道畑作地帯の対応方向に関して、農業所得増大の方策を具体的に検討すると共に、生産効率を飛躍的に引き上げる革新技術の導入可能性について検討するために、ビート収穫技術を中心に大陸ヨーロッパ(ドイツ、フランス)の実態調査を実施した。さらに、③本研究が対象としているもうひとつのフィールドである酪農地帯については、実態調査を通じて経営・経済状況を包括的に整理・分析すると共に、規模拡大によるコストダウンの可能性について具体的な検討を行った。これらの成果については、書籍、研究報告、報告書としてそれぞれ取りまとめを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、北海道の畑作・酪農地帯を中心として、土地利用型農業の体質強化策を具体的に検討するために、あらかじめ定点的な観測を行う調査地点を設定している。具体的には、①道東畑作中核地帯である小清水町(オホーツク管内)、②同じく道東の中山間畑作・酪農地帯である津別町(オホーツク管内)、③根釧の草地酪農地帯である浜中町の3地域であるが、いずれの地域においても、現地関係機関の協力のもと、継続的かつ詳細な実態調査を実施することが出来ている。①については、JAが2017年度中に策定予定の農業振興計画の検討作業にも加わり、農業所得増大の方策も含めた基本課題の抽出をある程度進めることが出来ている。②については、2017年の営農から導入予定の革新技術(ビートの自走式・多畦ハーベスター)の運用にかかわる具体的な検討に着手することが出来ている。③については、30戸程度の個別経営の農業所得データを継続的に整理・分析することが出来ており、JAの営農指導と結合させたベンチマーキングの手法についても検討を開始することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、定点的な観測を行う調査地点として設定している、①畑作中核地帯(小清水町)、②中山間畑作・酪農地帯(津別町)、③草地酪農地帯(浜中町)の3地域について、引き続き調査研究を推進する。2年間にわたる本研究の推進を通じて、各地域における最終的なアウトプットのイメージもある程度具体化することが出来ており、①では「輪作」の再構築とその条件整備、②では革新技術の導入・普及とその条件整備、③では経営改善指導と結びついたベンチマーキング手法の開発であり、研究のカウンターパートである現地関係機関(各JA)との間でも引き続き密接な協力関係を構築しつつ、今後の2年間で具体的な成果を取りまとめることとしたい。
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