2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of hypothetical bias generation mechanism and calculation of correction coefficient in economic evaluation of food safety
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15K07602
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
栗原 伸一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80292671)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 食品安全性の経済評価 / 仮想バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,食品の安全性の経済評価における仮想バイアスを,Random nth price auctionによる比較対照実験で検証した。この新しいオークションは,コンピュータがランダムに発生させた順番の価格を落札価格とした入札を繰り返すことで,競争による歪みを取り除き,より適正な金額の入札を促すというものである。また,仮想バイアスの存在を検証するための仕掛けとして,仮想バイアスを抑える対策をとったグループと,とらなかったグループの2種類を用意し,両グループ間のWTPを比較した。評価対象の農産物には,畜産物の中でも比較的安全性表示への反応が大きいと言われている牛乳を選んだ。また,WTPの測定対象となる安全性情報としては,比較的知られている「非遺伝子組換え(GMO)飼料牛乳」とまだあまり知られていない「抗生物質無添加飼料牛乳」を設定した。上記の実験を,2020年3月上旬に民間調査会社のモニター(関東在住)を対象として実施した。なお,標本サイズは第1回目の入札では230人/グループを確保したが,入札の度に2割ほど脱落し,最終的な標本サイズは107から110人となった。 測定の結果,2種類の付加価値属性に対するWTP(普段購入している牛乳との差額/リットル)は,非GMO牛乳については,仮想バイアス対策なしが54.3円,対策ありが51.2円となり,6%の仮想バイアスが確認できたが,統計的に有意な差とはならなかった。もう一つの安全性情報である抗生物質無添加飼料については,対策なし89円に対して対策ありが70.6円となり,26%の仮想バイアスが確認され,こちらは5%水準で統計的に有意な結果となった。このことから,仮想バイアスは,すでによく知られた危険性を排除した付加価値に対してはあまり発生せず,未知の危険性を排除した付加価値に対してもっとも大きく発生しやすいことが明らかとなった。
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