2017 Fiscal Year Research-status Report
制度派農業経営学による日本・タンザニアの農家経済経営の比較分析
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15K07607
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻村 英之 京都大学, 農学研究科, 教授 (50303251)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンザニア / キリマンジャロ / 制度派 / 農業経営学 / 酒米 / 酒造会社 / 綾部 / 範囲の経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンザニア・キリマンジャロの主に2農家を事例として構築した「制度派農業経営学」の分析枠組みにおいてはまず、「混成性の経営目標形成モデル」に基づき、実際は混成している経営目標を、「最大化計算」か「社会制度依拠」かという目標形成の過程や、「私的利益追求」か「コミットメント」(社会経済的目標)かという目標内容に着目して、理念的に仕分けをする。次に「農家経済経営の概念図」に基づいて、実際は混在している農家経済の内部と外部の、そして農家経済を構成する家計と経営の間での、モノ・カネ・ヒトの流れを把握する。さらに両者をからみ合わせて、「モノ・カネ・ヒトの流れ」(経営行動)の特徴を、それぞれの経営目標に基づくものとして解釈するというステップになる。 以上の分析枠組み(経営行動は価値連鎖として表現)を、綾部市小畑集落で主に主食米・酒米を生産するB農家に適用すると、下記の農家経済経営構造の特質が浮かび上がる。私的利益追求に貢献するのは、「酒造会社直接販売連鎖」[総価値(売上)の55%]、さらに高収益の「コシヒカリの消費者・小売店などへの直接販売連鎖」(総価値の35%)である。残りの総価値10%の「コシヒカリ・祝・京の輝きの農協出荷連鎖」については、収益は劣るが、産地全体の発展に貢献したいという経営目標の下で維持している。利益追求の「酒造会社直接販売連鎖」については、父親が急逝して経営を引き継いだ当初から、親子のような支え合い関係を結んでくれている伏見の1酒造会社(同社社長)にのみ直接販売している。高めの価格での全量買取という買い支えの下で、離農者の農地を積極的に受け入れ(同社が必ず購入してくれる酒米を増産し)、農地を守ると社会経済的目標を達成できている。また栽培時期がずれる多様な米の品種を組み合わせ、労働者(家族2名と雇用者1名)や農業機械を有効利用する費用削減(範囲の経済)も企図している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1年目に実施したキリマンジャロ調査の大雨・停電・断水による遅延により2年目の再調査が必要になり、また父の逝去にともなう調査計画の断念もあり、2年目の和歌山調査に十分な時間を費やせなかった。また3年目は、前教授異動にともなう単独での研究室運営や妻の逝去により、山形調査に十分な時間を費やせなかった。また研究目的であるキリマンジャロ(コーヒー生産農家)・和歌山南部(梅生産農家)・山形遊佐(米生産農家)の農家経済経営構造の特質の解明や分析枠組みの有効さの実証のために、京都綾部(米生産農家)を分析対象に加えたことも、当初計画の遅延につながってしまった。 その結果、延長により和歌山と山形の再調査をして、より精緻な成果を導くために、研究計画の見直しが必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
タンザニア・キリマンジャロ山中での調査は1年目に完了し、同じく「制度派農業経営学」の分析枠組みの構築も完了している。補助的な事例として付加した京都綾部の調査も終えており、本年度は遅れている国内調査とその分析に集中できる。 山形県遊佐町においては8月、和歌山県みなべ町においては2月に1週間程度の聞き取り調査を予定している。 またさらなる遅れを生じさせないため、1週間に3時間だけだが研究補助を1~2名、依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)1年目に実施したキリマンジャロ調査の大雨・停電・断水による遅延により2年目の再調査が必要になり、また父の逝去にともなう調査計画の断念もあり、2年目の和歌山調査に十分な時間を費やせなかった。また3年目は、前教授異動にともなう単独での研究室運営や妻の逝去により、山形調査に十分な時間を費やせなかった。また研究目的であるキリマンジャロ(コーヒー生産農家)・和歌山南部(梅生産農家)・山形遊佐(米生産農家)の農家経済経営構造の特質の解明や分析枠組みの有効さの実証のために、京都綾部(米生産農家)を分析対象に加えたことも、当初計画の遅延につながってしまった。 その結果、延長により和歌山と山形の再調査をして、より精緻な成果を導くために、研究計画の見直しが必要になった。同様の理由で書籍としての成果の公表も遅れているが、既に初稿の著者校正が終わりつつある。 (使用計画)本年度(最終年度)は遅れている国内調査とその分析に集中する。山形県遊佐町においては8月、和歌山県みなべ町においては2月に、それぞれ1週間程度の聞き取り調査を予定している。また研究の遅れを取り戻すために、1週間に3時間だけだが研究補助を依頼する予定である。
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Research Products
(7 results)