2016 Fiscal Year Research-status Report
カンボジア農村の豊かさを回復する:子供の食改善から考える農村機能向上プログラム
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15K07633
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮本 和子 山梨大学, 総合研究部, 教授 (60295764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米倉 雪子 昭和女子大学, 人間文化学部, 准教授 (60566389)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乳幼児低体重実態 / 栄養健康教育 / 栄養改善活動 / 住民参加 / 生活改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.子供の体重モニタリングと栄養改善活動の継続:6か村にて体重測定を継続。順調に体重増加する児がいる一方で、長期間体重増加不良を示す児もみられた。プノンペンに近い地域で母親の出稼ぎが急増し、生後3か月程度で体重減少や増加不良がみられる児が増えている村がある。離乳食実演と試食も実施し、バランス食の重要性と栄養価の高い離乳食・幼児食の必要性の理解を深めた。 2.体重増加不良児フォローアップ:家庭訪問にて状況を確認。出稼ぎにより母親が不在または早朝と夜のみ在宅で早期に母乳を停止する、スナック菓子が食事代わり、風邪・下痢を頻繁に繰返し、売薬で対処しているが使用する薬剤が不適切、祖母がケアの中心だが祖母自身が体調不良で子育てに対応できていないなどの課題を確認。下痢時に適切に補水・補液していない、出稼ぎにて現金収入が増え、スナック菓子・各種甘味飲料や不適切な薬の購入の増加傾向が把握できた。また、一部家庭を調理中に訪問し、日常的に摂取する料理と栄養バランスを把握した。 3.食生活改善につながる農業生産物アップ活動:野菜摂取の重要性は活動参加者の内では理解が深まり家庭菜園に取組む家庭も増えたが、乾季には中断が見られた。野菜以外にも代用できる常緑樹や野草があり、それらを積極的に利用している家庭もあるが、周囲への波及には至っていない。 4.生計調査:来年度選挙に向け政党が農家を集める会議を頻繁に行う等、対象村でも選挙準備の影響があり中断者が増加。利点はあるが記録困難で継続断念例もあり、研究分担者と今後の対応を検討中。 5.その他:不適切で危険な内服薬を購入している例が多いため、風邪・一般的な下痢では薬が不要であることや下痢の際の適切な補水・補液の理解を深めるための学習会・実習を追加した。家庭で作れるORS(経口補水液)実習は好評であった。参加者の多くが必要な補液量を理解していない実態も明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.体重測定の継続や、課題の発見は順調に進んだ。 2.参加型の住民学習活動も効果的に実施できた。 3.その一方で、母親の出稼ぎの急激な増加や地方選挙活動の影響、雨季の雨不足により稲作ができなかった地域がありボランティアの一部も出稼ぎに出たなど、プロジェクトでコントロールできない事象による影響のため、ボランティアや参加者の活動が制限される地域がみられた。 4.当初計画にて対象としていた課題以外にリスクの高い課題(不適切で危険な内服薬使用の増加)が発生したため、村での活動計画を一部変更して追加の活動を実施した。これにより、当初計画していた内容の一部が実施できなかった。生計調査は中断者が増加し、活動の見直しが必要となった。 5.主として上記3・4の理由で、本年度の目標としていた包括プログラム案の見直しまで至ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.子供の体重モニタリングと栄養改善活動の継続:本研究活動が終了した後も村単位で体重測定活動が継続できるよう、継続要因を整理し、住民参加型活動を強化する。 2.本調査活動でこれまで明らかになった課題の共有と解決策の検討:子供たちの栄養状態、健康状態、投薬のリスク、家庭菜園継続上の課題、適切な子供食の提供、乾季の代替食材の活用など、これまで明らかになった情報の再確認と継続できる改善活動の選択(優先順位の決定)。 3.当初計画の包括プログラムの提示の前段階での整理:いくつかの活動要素は検討できたが、包括プログラムを検討、修正し新たなプログラムを作成するという当初目標への到達は困難であると推測される。包括プログラムに必要な村での活動要素を整理し、活動可能なプログラム案提示までを新たな最終目標とするよう、修正を行う。 4.農民協会内での報告と普及活動の検討:6か村の住民ボランティアリーダーによる農民協会内での報告支援と他の村への普及可能性についての話し合いの実施。 5.来年度の課題:①協力NGOの本活動主力スタッフが退職することとなり、後継者による実施が順調に進むか、という課題がある。前任者から後任へ適切な申し送りをしてもらうと同時に、密に連絡を取り、影響を最小限にする必要がある。②地方選挙が実施されるため、その直前・直後の村での活動が困難になる可能性がある。適宜スケジュール調整を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
昭和女子大学所属の分担研究者が本年度予算を以下の理由により使用しなかったため。 カンボジアでは2017年6月のコミューン選挙に向け、政党が農村部でも農家を集める会議を頻繁に行うなど、選挙準備に時間をとられることが増えた。その影響もあって生計記録をつけている参加者で月例会に出席できない者が増えたため、毎月の記録の確認が遅れ、1年間の集計、ふりかえりと報告が、2016年度末になっても送られて来なかった。そのため3月の出張日程の確定が遅れ、旅費予算も変更となり、本年度予算を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昭和女子大学所属の分担研究者が2017年度研究費として使用する。
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