2015 Fiscal Year Research-status Report
動物プランクトンおよび水生生物を利用した水田からのリン回収
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15K07642
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
花山 奨 山形大学, 農学部, 准教授 (20282246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン / 植物プランクトン / 付着藻類 / 窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は水田土壌から田面水に溶出したリンを効率的に回収するために水田の動物プランクトンおよび水生生物が有機態リンから無機態リンへの回帰にどれだけ寄与するか明らかにすることを目的とする.本年は,田面水に溶出した無機態リンを有機態リンに変換する植物プランクトンに注目し,土壌の初期水分状態および温度が田面水に発生する植物プランクトンの特性および増殖におよぼす影響を検討した. 本研究では堆肥を連用している沖積土壌の水田表土の生土と風乾土を用い,人工気象器内(温度:25℃および35℃,照度:18klx(16時間明-8時間暗))で擬似水田における藻類の培養を行い,優占藻類の特性および田面水の理化学特性(DO,pH,溶存態無機リン濃度,全リン濃度)を調べた. 風乾土の場合,25℃において付着藻類の発生にともなって田面水のpHが8以上になった後,田面水の全リン濃度が上昇し,田面水中に植物プランクトンが増殖した.ほとんどの植物プランクトンは緑色の球形の単体で存在し,直径は5μm以下であった.なお,植物プランクトンの同定は困難であった.35℃の場合,土壌の異常還元によって土壌中のガスが噴出し植物プランクトンの増殖を確認できなかった.生土の場合,25℃および35℃の双方において付着藻類の発生にともなって田面水のpHが8以上になっても田面水の全リン濃度は上昇せず,田面水中に植物プランクトンは増殖しなかった.しかし,土壌表面にアナベナとその粘鞘によって形成された塊が多く確認された. 土壌の初期水分状態によって植物プランクトンの特性および増殖が影響されることが明らかとなった.この結果は,土壌の乾燥状態に依存した土壌中の有機態窒素の無機化が植物プランクトンの特性および増殖に影響をおよぼすことを示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
風乾土を用いて田面水にリンが溶出する場合,ミジンコに摂食可能な5μm以下の植物プランクトンで優占されることが明らかになった.これにより動物プランクトンを利用した有機態リンから無機態リンへの回帰が期待される.一方,生土の場合,リンは溶出しないが,土壌表面に付着藻類は増殖するということが明らかにされた.この場合,有機態リンから無機態リンへの回帰は水生生物による付着藻類の摂食に期待することになる.この水生生物によるリン回帰に関しては次年度以降に検証する予定である. 本年度初めて植物プランクトンの観察を実施し,不慣れであったため多くの時間を取られてしまい,もう一つの課題である田面水の対流と付着藻類の増殖の関係に十分取り組めなかった.この課題は次年度に取り組む予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に実施できなかった田面水の対流と付着藻類の増殖の関係について室内実験で検証する. また,28年度の計画に従い,野外において土壌から田面水へのリン溶出に関する実験を行う.この実験では太陽光が付着藻類および植物プランクトンの生態におよぼす影響を中心に検証する.同時に,殺虫剤によってミジンコの発生を抑制し,ミジンコによる有機態リンから無機態リンへの回帰を検証する.
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Causes of Carryover |
実際の交付金の関係から当初予定した施設(簡易型ファイトトロン)から安価な施設(ビニールハウス)に計画変更したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
施設の使用を開始し,実験を通して問題となる施設内の環境状況を明らかにし,その問題に対処するための関連機器および施設を購入および設置する予定である.
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