2016 Fiscal Year Research-status Report
動物プランクトンおよび水生生物を利用した水田からのリン回収
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15K07642
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
花山 奨 山形大学, 農学部, 准教授 (20282246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水田土壌 / 田面水 / リン溶出 / 栄養塩競合 / 土壌表面撹乱 / 対流 / ペルチェ素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は以下の二つの課題について成果を得た。 (1)野外において田面水のpH上昇にともなって水田土壌から田面水へリンが溶出するか擬似水田を使って検証した。実験には堆肥を連用した水田の湿潤表土を使用した。擬似水田は2016年5月19日から6月29日の間野外に設置した。この実験期間の日射および気温は平年並であった。リン溶出は田面水のpHが9以上となった後に確認されたが、実験終了時のリン溶出量(平均値0.93mg/l、標準偏差0.47mg/l(n=6))はばらついた。このリン溶出のばらつきは、土壌表面の付着藻類と浮遊藻類との間の栄養塩競合による浮遊藻類の増殖の抑制および水中の小動物による土壌表面の撹乱による影響が考えられた。野外における水田土壌から田面水へのリン溶出は田面水のpH以外の他の要因も考慮する必要が示唆された。 (2)田面水の対流は、日射による土壌表面の加熱にともなう上昇流と蒸発による水面の温度低下にともなう下向流によって生じる。これらの流れによって田面水中にわずかに不均一な温度分布が形成されると予想される。そこで、対流によって生じる田面水中の微小な温度変化をペルチェ素子によって測定可能か検討した。対流は、田面水における対流の発生機構を模して調整した。水深5cmとなるよう水を含んだプラスチック製の円筒容器の底面を恒温水(25℃、30℃、35℃、40℃、45℃を設定)で暖め、水面は大気(20℃で固定)に開放し、対流を発生させた。その結果、容器底面と大気との間の温度差が大きくなるにともなって、ペルチェ素子の出力電圧値の変動幅は大きくなった。そして、容器底面と大気との間の温度差とペルチェ素子の出力電圧値の標準偏差の間に高い正の相関(R2=0.97)が示された。また、ペルチェ素子を使って野外における水田の田面水の対流測定が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野外においてもリン溶出を確認できたが、室内実験と異なるリン溶出機構であった。屋外におけるリン溶出機構の理解は、今後の研究の中で大きな意味を持つためこの点ついて多くの時間を要した。しかしながら、屋外におけるリン溶出機構の理解は不十分であり、さらなる検討を要する。次年度においてもこの点を考慮して研究を進める予定である。 田面水の対流と付着藻類の増殖の関係に十分取り組む前に、改めて田面水の対流を把握するための手法を確立する必要性を感じた。本年度の成果から対流を測定する方法には目処が付いたため、改めて次年度に田面水の対流と付着藻類の増殖の関係に十分取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
室内実験では以下の課題に取り組む。 ①田面水の対流と付着藻類の増殖の関係について検証する。②タニシによる付着藻類の摂食および排泄にともなうリン溶出について検証する。 屋外実験では、紫外線が土壌から田面水へのリン溶出について検証する。この実験では紫外線が付着藻類および植物プランクトンの生態におよぼす影響を中心に検証する。
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Causes of Carryover |
前年度設置した実験用ビニールハウスで本年度実験した結果、ハウスに取り付けを予定していたファンを取り付ける必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ビニールハウスの維持補修、および実験における消耗品の費用に使用する。
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