2015 Fiscal Year Research-status Report
放射能災害農村住民の二地域居住による生活・農業・コミュニティの再建に関する研究
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15K07655
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
糸長 浩司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10184706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤沢 直樹 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10409071)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 東京電力福島原発事故 / 放射能汚染 / 飯舘村 / 生活再建 / 二地域居住 / コミュニティ / 除染限界 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
飯舘村の復興は現在両義的である。帰村施策優位の村当局と帰村希望村民による飯舘村復興計画と復興事業、帰村を選択せず避難先での一定期間定住、永住を希望する村民達の生活再建・コミュニティ再建である。飯舘村のHPは、2015年11月からは、村民の避難生活形態の中に、「住宅取得・親族宅等」を入れざるを得ないほど、村民の村外での自立再建住宅の取得が始まっている。 2016年1月1日で、県内避難2729世帯、人口6204人に対して、「住宅取得・親族宅等」は800世帯(29%)2250人(36%)となり、仮設住宅は524世帯(19%)955人(15%)、借り上げ住宅は1201世帯(44%)、2,592人(42%)である。2013年1月1日で、県内避難2835世帯、人口6147人に対して、仮設住宅は596世帯(21%)1173人(19%)、借り上げ住宅は1710世帯(60%)、3,981人(65%)である。仮設住宅戸数は減少し、各地の仮設での空き家も目立ってきている。5年経過した中で、若い世帯での村外での生活・仕事拠点、子供の教育拠点は明確となってきている。高齢者世帯でも村外の生活拠点づくりと合わせて村内の自宅改築の動向もあり、個々の村民での2地域居住的生活は具現化してきているともいえる。 20の行政区長への聞き取り調査を研究室の浦上と2015年12月に実施したが、行政区解体が危ぶまれる地区もある。今後の帰村は高齢者が主体となり、農地管理、消防、環境管理、行事等の維持をする主体が減少し、コミュニティのハード・ソフトの崩壊が危惧される。帰村(2地域居住形態も含む)し、農地管理、集落環境の維持を図る覚悟を語る行政区長もいる。帰村し、集落環境の維持に努力する村民と戻れない村民の意識の中に亀裂が生じ、かつての地縁コミュニティの希薄化、弱体化が危惧される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度の後半からの採択であり、スタートが遅れたが、予定の飯舘村の20行政区長への聞き取り調査は実施し、貴重なコミュニティでの被害実態、再建・復興課題は明確になってきた。ただ、村民へのアンケートの実施に関しては、2016年度の研究協力者の村民、議員とも協議して実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度で実施した研究内容の継続で放射性セシウムの賦存状況の解明、特に、里山での実態解明と里山暮らしの再生の厳しさを明確にしていく。同時に、平成29年4月での帰還宣言が出る可能性が高い平成28年度における村民の意識、及び2地域居住実態の解明と、二重コミュニティの実態と意識、地縁コミュニティ維持の課題を明確にしていく。 20の行政区単位で、帰村宣言がされる状況下で、村民、コミュニティがどういう意向と計画、帰村行動を行うかについても詳細に調査を行う。 さらに、村民の半数以上が参加しているADR申立団に対する研究を進め、村外賠償とその賠償金による生活再建、コミュニティ再建の展望と課題についても考察する。 以上のように、帰村宣言がなされる非常に流動的な状況下であり、シナリオが見えにくい中での研究推進となる。平成27年度の研究課題を深めていく。①飯舘村内の放射能汚染の実態解明の継続と測定結果の村民への報告を行う。特に、除染経過後での宅地、農地、森林の汚染実態を解明する。②村民の生活拠点、二地域居住スタイル実態の解明と帰村宣言後での生活再建課題の解明を行う。住民とのワークショップおよびヒヤリングの実施による。
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Causes of Carryover |
2015年度後期からの採択であり、当初予定していた、住民アンケートや住民聞き取り調査に関する日程調整が十分にできず、次年度での実施として、予算として保留した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、住民への聞き取り調査、及びアンケート実施等の予算として計上し、実施する予定である。
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Research Products
(2 results)