2016 Fiscal Year Research-status Report
放射能災害農村住民の二地域居住による生活・農業・コミュニティの再建に関する研究
Project/Area Number |
15K07655
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
糸長 浩司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10184706)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤沢 直樹 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10409071)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 東京電力福島原発大災害 / 飯舘村 / 避難解除 / 放射能汚染公害 / 二地域居住 / コミュニティ再生 / 除染限界 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.飯舘村内除染で住宅内外の空間線量率は低減しているが、周囲の里山、道路際等の汚染は継続している。帰村に伴う森林火災による放射能汚染拡大が心配である。2.村の水源池の西原水源池の淵土壌深5cmでCs137が約13000Bq/kgある。表流水及び浄化された水道水は下限値0.4~0.8Bq/ kgで、不検出で安全である。集中豪雨等での懸濁汚染の心があり、水源池・浄水施設管理と監視が必至となる。3.2017年2月現在村民の県内の避難先住宅取得は976世帯(県内2452世帯の39.8%)、2926人(県内5775人)、村外住宅取得が進む。村内の既存住宅の解体・新築、リホームも進む。世帯主層の二地域居住スタイルも選択される。2016年12月のK地区村民アンケートを実施し、帰村宣言後「即帰村」8%、「5年内帰村」7%、「二地域居住」22%、「村外の生活拠点」27%で、村外居住、二地域居住となる。帰還後の高齢者不安についての村民WSでは、破局的事故前の自給・採取生活ができず購入に頼る生活への経済的不安、ストレス、治安問題、新鮮で安全な食料等が指摘された。4.飯舘村民の村外での農業再建、共同菜園活動は継続的に進められている。村内での営農再開方向は花卉の可能性が高い。除染農地の農的活用策として、研究代表者らは独自にソルガム、ヤーコン等のエネルギー作物の栽培とメタンガス化、エタノール化の可能性を実証した。放射能Csの移行率は低く、エネルギー化での放射能汚染問題はない。5.現段階での帰村宣言は無謀である。帰村定住、二地域居住、帰村しない村外定住という多様な村民の居住選択権を法的に補償すべきである。村民には苦渋の選択にはなるが、チェルノブイリ法に準ずる法律を制定し、「放射能汚染地域(放射能公害地域)」(仮)として認定した上で、村民達の、健康権、財産権、ふるさと定住権(自然共生居住権)の補償を獲得すべきである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りで進捗している。異常な災害であり、かつ、避難状況が続き、放射能汚染実態も複雑な中で、村民達の協力も得て、アンケート、現地調査測定、ワークショップも実施でき、貴重な成果も出て、かつ、村民達にも貴重な情報を提供できた。また、放射能専門家の研究者との共同によるシンポジウム等も実施でき、社会に対する本課題が社会的風化されないための社会貢献もあわせてできたと思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
村民と共働して、帰還宣言後も村民の動向、二地域居住を含めた村民達の生活再建とその課題、コミュニティ再生とその課題、除染農地の活用策、里山汚染対策等の現地に即した実証的、社会貢献的、災害農村計画的研究を推進し、新たな農村計画分野の開拓にも寄与していく。
|
Causes of Carryover |
今年度は、避難している状況下で、一行区に協力して頂きアンケートを実施できたが、当初の予定は複数の行政区へのアンケート実施であったが、避難状況下で実施できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、複数の村内行政区及び、村外の避難住民の避難コミュニティの協力を得て、アンケート、ワークショップを実施する予定である。生じた次年度使用額を、アンケート(人件費・謝金)、ワークショップの開催(その他)の経費に充てる。
|