2015 Fiscal Year Research-status Report
反芻家畜におけるサルソリノールによるプロラクチン分泌の中枢性支配に関する研究
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15K07685
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
橋爪 力 岩手大学, 農学部, 教授 (60124533)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サルソリノール / ドーパミン / プロラクチン / ドンペリドン / TRH / ヤギ / 反芻家畜 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロラクチン(PRL)分泌に及ぼす中枢でのサルソリノール(SAL)とドーパミン(DA)の相互関係を明らかにするために次の実験を行った。(1)DAは腎、消化管などでも合成されるため、中枢のみならず、末梢にも存在する。そこで、中枢でのSALとDAの相互関係をより明確にするために、血液脳関門を通過できないDAD2受容体拮抗薬、ドンペリドンを用いて、末梢におけるDAの作用を除去した後、SALによるPRL放出反応を調べた。また、SALによるPRL分泌機構の一端を明確にするため、下垂体に直接作用してPRLを放出させることが分かっている甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)とSALによるPRL放出反応を比較した。本実験では日長(12時間明:12時間暗)と温度(20℃)を一定にして飼養した成熟雌ヤギを用い、SAL(5 mg/kg b.w.)またはTRH(1 ug/kg b.w.)を頸静脈内に単独またはドンペリドン(0.1 mg/kg b.w.)とそれぞれ併用投与して血中PRL濃度の変化を比較した。ドンペリドンを投与すると血中PRL 濃度は持続的に上昇した。SAL投与により血中PRL濃度は急激に上昇したが、SAL とドンペリドンを併用投与してもドンペリドン単独投与時の反応と差はなかった。一方、TRHとドンペリドンを併用投与すると血中PRL濃度は相加的に増加した。これらの結果から、SALにより誘起されるPRL放出反応は、視床下部外のDAによっても修飾されること、またSALの作用部位は TRHと異なることが示唆された。(2)本年度はこの他、ドンペリドンと作用機構の異なるDAD2受容体拮抗薬、ハロペリドールを用いた実験やSALとDAによるPRL分泌機構とノルアドレナリン作動性ニューロン介在に関する実験も予備的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は交付申請書に記載した中枢を介したSALとDAによるPRL分泌制御機構に関する実験を、主としてD2DA受容体拮抗薬であるドンペリドンを用いて行い、一応の研究成果を得ることができた。またドンペリドンと作用機構の異なるD2DA受容体拮抗薬、ハロペリドールを用いた実験やSALとDAによるPRL分泌機構とノルアドレナリン作動性ニューロン介在に関する実験も予備的に行ない、これらの研究をさらに継続することにより中枢を介したSALとDAによるPRL分泌制御機構を推進できる手がかりも得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は血液脳関門を通過できないD2DA受容体拮抗薬、ドンペリドンを用いてSALとDAによるPRL放出機構を検討した。次のステップとしては血液脳関門を通過できるD2DA受容体拮抗薬、ハロペリドールを用いて同様の実験を行い、ドンペリドンの結果と比較する。またこの実験と合わせて脳内に到達可能なDAの前駆物質L-DOPAを用いて、脳内のDA量を高めた条件下での検討も行いたい。さらにDAはチロシンからL-DOPAを経て合成されるので、α-methyl-p-tyrosineを用いてチロシンからL-DOPAの合成を抑制した条件下でもSALによるPRL放出反応を検討したい。本年度に予備的に行ったノルアドレナリン作動性ニューロンのSALとDAによるPRL分泌制御機構への関係についてもさらに研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
2016年6月26日~30日にフランスのトゥールで18th International Congress on Animal Reproduction(第18回国際動物繁殖学会)が開催される。この国際学会で研究成果の一部を発表するための旅費として使途するために繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記した通り、国際学会での発表経費に使途する。すなわち、国際学会登録料、現地滞在費、盛岡からフランスのトゥールまでの往復の鉄道料金と航空運賃として使途する。残額については薬品等の消耗品購入費として使途する。
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Research Products
(3 results)