2015 Fiscal Year Research-status Report
純粋な牛ゴナドトロフ細胞のモデルを用いた泌乳牛のLH・FSH分泌活性化法の開発
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15K07693
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
角川 博哉 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (80370592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水上 洋一 山口大学, 大学研究推進機構, 教授 (80274158)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウシ |
Outline of Annual Research Achievements |
分娩後泌乳牛では下垂体前葉に存在するゴナドトロフ細胞からの重要ホルモン、LHとFSHの分泌が抑制され様々な繁殖障害を生じている。しかし原因は未解明で、また既存の治療法にも限界がある。研究が進まない理由は、同細胞の下垂体前葉細胞集団中の存在比が低く、同細胞の純化法も無かった事にあった。研究代表者らは、最近、ウシ下垂体前葉の細胞集団から純度100%のゴナドトロフ細胞を得る方法を開発した。そこで分娩後泌乳牛と正常牛からの純粋なゴナドトロフを用い、次世代シーケンサーやプロテオミクス等で詳細に分析し、両者で有意差のある受容体、膜上特殊構造である脂質イカダに乗る受容体、また細胞内外の発症機構を解明する。次に重要受容体のリガンドと純粋なゴナドトロフを用い、LH・FSHの発現・分泌を活性化させる方法を開発する。 初年度は、発情期と黄体期の正常牛から下垂体前葉を採取し、次世代シーケンサーにより、発現している全受容体を解明し、各受容体の正常牛・分娩後泌乳牛の群間差から、発症に関わる血中リガンドを推定することにした。また全発現遺伝子の解析により、分娩後泌乳牛のゴナドトロフが分泌抑制を起こす原因となる発症機構を分子レベルで推定した。 正常な性成熟後未経産牛に対し、プロスタグランジン注射等で性周期を調節した後に、発情期(n=4)と排卵後期(n=4)に屠殺して、下垂体を採取した。各下垂体からRNAを抽出し次世代シーケンサーを用いたRNA-Seq法で分析した。 その結果、発情期と排卵後期の間で有意に発現量に差がある遺伝子として数百遺伝子を見つけ出し、有望な受容体も発見している。特に、新規のGPR型受容体などの発見もあった。発現量に差がある遺伝子の群のデータを基に、パスウェイ解析も実施し、有意なパスウェイも見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階でのもくろみ通りに、発情期と黄体期の正常牛から下垂体前葉を採取し、次世代シーケンサーによる、網羅的な発現遺伝子の解析を完了している。また計画段階では、フローサイトメーターを用いた純粋なゴナドトロフ細胞の調整方法のみがあり、生成作業には長時間を要した。ところが初年度の研究の中で、磁気ビーズと強力マグネットを用いた、より迅速に純粋なゴナドトロフ細胞を調整する方法も確立できた。さらに精製ゴナドトロフ細胞は、培養にも用いることが確認されている。したがって、初年度に予定していて全工程が予定どおりに進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
分娩後泌乳牛と正常牛の純粋なゴナドトロフの細胞膜から、GnRHRが乗る脂質イカダを調製し、同乗する全受容体と群間差を明らかにし、発症原因の血中リガンドを推定する。ゴナドトロフでの発現が認められた受容体に対するリガンドを、ゴナドトロフの培養液に添加し、GnRHR、LH、FSHの分泌・発現量、またGnRHの結合可能なGnRHR量への効果を解明する。
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