2016 Fiscal Year Research-status Report
グリーンインフラの利用による汚濁負荷削減を目的とした耕作放棄地の再生システム
Project/Area Number |
15K07816
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
木塚 俊和 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部環境科学研究センター, 研究主任 (50570628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀山 哲 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (80332237)
小野 理 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部環境科学研究センター, 主査 (20557285)
三上 英敏 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部環境科学研究センター, 研究主幹 (80442622)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 耕作放棄地 / 未利用農地 / グリーンインフラ / 緩衝帯 / 衛星リモートセンシング / 汚濁負荷 / 栄養塩 / 窒素安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
緩衝帯として期待できる耕作放棄地の空間分布推定(課題3)にあたり、標茶町で過去に実施された耕作放棄地調査の結果をGISデータとして整備し、耕作放棄地の空間分布を明らかにした。加えて、衛星リモートセンシングを用いた農地の分類手法を検討した。本研究では農地内の植物の成長や刈り取り等に伴う地表面反射率の季節変化に着目することにより、精度の良い分類手法を構築することができた。本手法を釧路湿原の集水域に適用した結果、現在利用されていないと思われる農地(未利用農地と呼ぶ)は集水域の全域に見られ、とくに農地の辺縁部(湿原や森林との境界部)に比較的多いことが明らかとなった。本研究で作成した未利用農地の広域分布図は未利用農地の有効利活用を図る上で有益な情報になるとともに、水の流入・流出経路や湿潤度などの環境条件を考慮することにより、緩衝帯として期待できる未利用農地を抽出できると考えられる。 次に耕作放棄地における栄養塩浄化量の解明(課題4)について、昨年度設定した調査区で水収支と栄養塩収支の観測を継続した。水位の連続観測の結果、調査区の水位変動幅はおよそ90 cmに達し、増水時には調査区全域が冠水することが明らかとなった。調査区の栄養塩濃度の現状把握と起源推定のため、調査区内28地点にて地表水と地下水の窒素・リン濃度を調べるとともに、栄養塩濃度の高い地点で地下水の窒素安定同位体比を調べた。その結果、窒素は調査区中央部の地下水で局所的に高い濃度を示し、有機物由来の窒素を多く含んだ湧水の影響を受けている可能性が示唆された。一方、リンは調査区に隣接する明渠排水路の近傍で高い濃度を示し、冠水しやすい条件が有機態リンの溶出に影響していると考えられた。これらの知見は耕作放棄地の有効利用や栄養塩の流出抑制を検討する際の基礎情報として活用される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に完了する予定だった耕作放棄地の現状把握(課題1)について、新たに衛星リモートセンシング手法を導入することで、より広域を対象とした耕作放棄地の現状把握を完了できた。引き続き、緩衝帯として期待できる湿潤な耕作放棄地の分布推定(課題3)に取り組み、当初予定の平成29年度に完了させる予定である。一方、耕作放棄地における栄養塩浄化量の解明(課題4)について、機器故障により一部の期間の水位データが欠測となった。加えて、記録的な大雨により、通常とは異なった水文条件での観測となった。しかし、平成29年度も観測を継続することにより目的は達成できると考えている。全体としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き課題3と課題4に取り組む。課題3では、当初、緩衝帯として期待できる湿潤な耕作放棄地の分布のみを明らかにすることを目標としていたが、地域ニーズを踏まえ、耕作放棄地の多様な有効利活用策の提案につなげるために、耕作放棄地の類型化手法を新たに検討する。類型化の指標としては、圃場の冠水しやすさのほかに、既存の農地や国立公園との位置関係等を検討する。これらの検討を進めるために、広域的に抽出した耕作放棄地の現状確認を行うとともに、既存のGISデータを用いて各圃場の地理的・地形的特徴(標高、傾斜等)をデータ化する。課題3は亀山、小野、木塚が担当する。 課題4では調査区における水収支と栄養塩収支の観測を継続する。2年間で得られた栄養塩収支のデータから、調査区における栄養塩浄化量を算出する。さらに、圃場内の栄養塩収支の時空間変動を調べて、栄養塩の流入・流出フラックスに影響する環境条件を明らかにする。また、流域スケールでの栄養塩浄化量の評価(課題5)に向けて、調査区で明らかにした栄養塩収支が他の耕作放棄地にも共通して言えるのかどうかを確認するために、調査区以外の複数の耕作放棄地における栄養塩収支の観測手法を検討する。課題4は木塚、三上、亀山が担当する。
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Causes of Carryover |
GIS解析補助の人件費を計上していたが、すべてのGIS解析作業を課題担当者が実施したため人件費を執行しなかった。また、機器の故障や異常気象により、調査区における水収支と栄養塩収支の観測について平成29年度も引き続きこれまでと同程度の頻度で調査を行う必要性がでてきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は平成29年度の助成金と合わせて現地調査に必要な旅費及び消耗品費として使用する。
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Research Products
(2 results)