2016 Fiscal Year Research-status Report
野生動物の生息空間としての農地周辺環境評価と環境管理による農業被害防除の可能性
Project/Area Number |
15K07822
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60285690)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業被害 / 野生鳥獣 / 生息分布 / 被害対策 / 被害強度 / ハザードマップ / 農業経営 / 生息地 |
Outline of Annual Research Achievements |
シカ・サルの農業被害が比較的少ない屋久島町・原区において、加害動物に関する調査を継続した。農業被害を与えているシカ・サル・タヌキの地区内の生息分布を把握するために、2016年秋から2017年冬にかけて、自動撮影カメラを約50台設置し、動物の画像データを収集した。この地区で最も被害をもたらすヒヨドリの地区内の分布を把握するために、ヒヨドリが渡ってくる前の夏期(2016年)と、渡ってくる冬期(2017年冬)に地区内約40地点において定点調査を行った。さらに、農地から離れた森林地帯においても20地点で夏期と冬期に同様の調査を行った。その結果、原区・森林地帯ともに夏に比べ冬にヒヨドリが増えることが解った。しかし、原区における過去3年間の冬のデータと比べると今シーズンも同程度のヒヨドリしか発見されなかった。地元ではヒヨドリの大規模な被害は2年周期で発生すると言われてきたが、この数年間はヒヨドリが少ない傾向が続いていたといえる。 原区の対照区として尾之間区を選定した。尾之間区では原区と異なり大規模な電気柵が設置されておらず、また兼業農家が多いのが特徴である。尾之間区の役員の方々、農家の方々と繰り返し協議を行ない、調査協力を取り付けた。2016年11月と2017年1月に合計26名の農家から農業被害や加害動物、被害対策、経営状況について聞き取りを行った。また、この地区内における被害防止の状況を調査した。2016年秋から2017年冬にかけて地区内に30数台の自動撮影カメラを設置して、野生動物の生息状態を調査した。2017年冬にヒヨドリに関しても34地点で定点調査を行った。 過去の屋久島の鳥獣害に関して文献調査を行った。江戸期から1950年以前まで屋久島ではシカが低地にも生息し、農業被害を出していたことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原区において、哺乳動物を対象とした自動撮影カメラを用いた調査およびヒヨドリ調査は予定通り実行できた。ヒヨドリに関してはバックグラウンド情報として被害時期以外の調査(夏期)と、農地から離れた森林地帯での調査も実施できた。 懸案となっていた原区の対照区となる地区(尾之間区)を設定することができた。尾之間区の役員の方々や農家の方々と協議を行い、調査協力を得ることができた。そして、実際に農家からの聞き取り、自動撮影カメラを用いた調査、ヒヨドリ調査を行うと共に、現地の農地の現状把握もある程度、実施することができた。 以上から、データ解析がやや遅れているものの、全体としては予定通り調査研究が進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
渡ってくる個体数の年変動の大きなヒヨドリについては、ヒヨドリ飛来が多い年のデータが取れていないため、2017年度も継続して調査する必要がある。尾之間区で聞き取りに協力していただいた農家が実際に耕作している場所については不明確だったケースがあったので、その確認作業を現地で行う。また、最近の鳥獣害の現状について、現地の方々から情報収集する。 過去2年間で収集した野生鳥獣の生息分布、被害分布、生息・農地環境、農家の属性に関して分析する。それに基づき、現地の協力者・団体への結果報告書の作成、および学術成果報告書を作成する。
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Research Products
(3 results)