2017 Fiscal Year Annual Research Report
Potential of habitat management for preventing agricultural damages by wildlife
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15K07822
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60285690)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業被害 / 生息密度 / 農業経営 / 野生動物 / 社会的要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
屋久島で多くの農業被害を出しているヒヨドリの生息状況を島の南部で調べた。ヒヨドリ被害が多い冬季(2018年2月)に2つの集落:H区とO区の71カ所において定点調査を行った。また、同様の調査を農耕地帯から離れた自然林(西部地域)の20カ所でも行った。H区・O区ともに前年(2017年)と比べ、ヒヨドリ数は減少したが、自然林ではむしろ増加していた。このことは、たとえ島全体にいるヒヨドリが多くても、必ずしも農耕地にいるヒヨドリが多くなるわけではない可能性を示している。また、H区内のヒヨドリ分布を前年と比較したところ、果樹園と林(人工林含む)内で減少し、イモ畑で増加していた。農耕地内のヒヨドリ分布にも大きな年変動があることが解った。こうしたヒヨドリ数や空間分布に年変動が起きる要因については、屋久島の自然林および渡りの経路となる地域での食物生産量の年変動を含めて検討する必要があると考えられた。 H区・O区の農家68名の経営形態および農地ごとの被害状況を地図上にまとめた。さらに85カ所の自動カメラのデータから、311農地でのシカ・サルの生息密度を空間補完法で推定した。そして、各動物の生息密度、耕作作物、地区の違い、農地面積、農業従事者数、被害対策労力が、農業被害強度に与える影響を一般化線形混合モデルで分析した。試験的な分析では、シカ被害強度は農地面積が大きく、また、イモ類を耕作している場合に増加する傾向が示された。さらに、地区間でも被害強度が異なっていた。H区とO区では獣害に対する組織的な取り組みに違いがあることが聞き取り調査により解っている。サル被害強度は農地面積が大きく、果樹を耕作している場合に増加傾向にあった。シカ・サルともに被害強度と生息密度に有意な関連性は見いだせなかった。野生動物の被害強度は、作物の種類だけでなく、農地面積や社会的要因が影響することが示唆された。
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Research Products
(4 results)