2016 Fiscal Year Research-status Report
都市河川に「望ましい植生」を成立させるための景観生態学的研究
Project/Area Number |
15K07830
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中山 祐一郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (50322368)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保田 謙太郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549032)
下村 泰彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (50179016)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 都市河川 / アブラナ属 / ナヨクサフジ / 植生 / 土壌環境 / 景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)都市河川における外来植物の分布の変遷の解明のⅰ)アブラナ類とナヨクサフジを指標とした外来植物の分布の変遷:和歌山県の紀ノ川と福井県の北川でアブラナ類とソラマメ属外来種のナヨクサフジおよび在来種のカラスノエンドウを採取した。昨年度にナヨクサフジで行った葉緑体DNA多型分析を在来ソラマメ属3種を加えて行ったところ、trnKイントロン領域にそれぞれの種に固有の塩基配列が検出され、種内多型は認められなかった。 ⅱ)「対策が必要となる外来植物」の選定:和歌山県の紀ノ川では、アブラナ属の生育期に特定外来生物のナルトサワギクが高頻度で見られた。和歌山県では高速自動車道の南伸が分布拡大の一要因とされているが、河川堤防も本種の分布拡大経路になると考えられた。また、その他の総合対策外来種に選定されているオオキバナカタバミの自生も確認された。福井県の北川では、九州の河川堤防でよく見られるノダイコンが見られた。 2)都市河川における「在来植生」と「潜在植生」の推定のⅰ)植生景観の変遷に関わる調査として、江戸時代の「澱(淀)川両岸一覧」に描かれた17景と現在の景観とを比較分析したところ、日常生活や産業面での河川と人との結びつきは現在には継承されておらず、堤内地にある景観構成要素や生活景が、洪水対策として高く築かれた堤体によって見られない状況にあることが把握できた。 ⅱ)潜在植生の推定と、3)都市河川において「望ましい植生」を形成する計画の「在来植生」と「潜在植生」の回復と維持に必要な管理方法の検討に関わる調査として、アブラナ属の生育する淀川と揖保川の堤防において植生と土壌の化学的特性との関係を解析したところ、土壌の可給態リン酸が多いほどアブラナ属の優占度が高まることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1-ⅰ)アブラナ類とナヨクサフジを指標とした外来植物の分布の変遷」では、アブラナ属に先行してナヨクサフジを含むソラマメ属において分析を進めた一方で、アブラナ属では分布の変遷に先立ち、分布の現状を詳細に解析する計画に変更し、その解析準備を進めている。「2-ⅱ)「対策が必要となる外来植物」の選定」では、ナルトサワギクが地域によっては河川でも問題となりつつあることを把握するとともに、注意を要する種として2種を選定できた。その一方で、これらの種の分布に関する過去の記録の調査には着手できていない。「2)都市河川における「在来植生」と「潜在植生」の推定」では、昨年度に見出した、堤防に存在する土壌環境の微細な違いと植生との関係からの解析を発展させ、アブラナ属の優占する植生の成立要因を明らかにした。今後は堤防に異なる土壌環境が形成された要因を明らかにすることによって、過去の植生の推定や)都市河川において「望ましい植生」を形成する計画に適用したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
前項までに述べたとおり、アブラナ属では分布の変遷に先立ち、分布の現状を詳細に解析する計画に変更し、その解析準備を進めている。「望ましい植生」を形成する計画は引き続き都市河川を主体に行うが、植生の成立要因を解明し「望ましい植生」を考察するモデルケースとして都市域の公共緑地が適していることが分かりつつあるので、今後は都市域の公共緑地も対象として研究を進める。海外の都市河川での植生回復度調査は研究代表者・分担者の公務の現状から判断して実施が困難なので、実施の可能性を含めて再検討する。
|
Causes of Carryover |
学内の他研究室で行った土壌分析に係る物品のうち、全窒素・炭素分析に要した高純度ヘリウムガスを除いて、在庫消耗品があったために新規の購入がなされず当該年度中の請求がなかった。そのため、土壌分析のために確保しておいた費用に残額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、在庫消耗品が無くなり次第新規購入される予定であり、請求があり次第支払う。
|
Research Products
(1 results)