2015 Fiscal Year Research-status Report
病態モデル・患者標本における炎症性消化管知覚過敏における熱・冷刺激受容体の役割
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15K07968
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
堀江 俊治 城西国際大学, 薬学部, 教授 (50209285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 機能性ディスペプシア / 温度感受性TRPチャネル / 病態モデル / 遠位結腸 / 求心性一次知覚神経 / TRPM8 / TRPV1 |
Outline of Annual Research Achievements |
食生活の欧米化や過度な社会的ストレスにより炎症性腸疾患や機能性ディスペプシアの患者が急増しており、それに伴う消化管の知覚過敏性により、罹患患者のQOLは著しく低下している。申請者はこれまでの科研費基盤研究の下で消化管の知覚過敏性の原因について基礎薬理学的に検討を進め、「消化管疾患における知覚過敏性には熱刺激受容体TRPV1発現神経の増が関与している」という仮説を立てた。本年度の検討では、潰瘍性大腸炎病態モデルマウスを作成し、消化管知覚過敏性の原因に関して免疫組織化学的な手法を用いて検討を行った。研究成果を以下の3つにまとめた。 (1)炎症性胃腸疾患病態モデルマウスの作製:マウスにデキストラン硫酸ナトリウムを自由飲水させ潰瘍性大腸炎病態モデルマウスを作成した。 (2)正常の実験動物から遠位結腸、直腸を部位別に凍結切片標本を作成し、熱刺激受容体TRPV1および冷刺激受容体TRPM8の起源および分布・局在について検討した。TRPV1・TRPM8は粘膜、粘膜下の血管周囲、筋層において発現が観察され、主に、粘膜下層と平滑筋層にある神経線維上に発現していた。粘膜層にはあまり多くは観察されなかった。 (3)潰瘍性大腸炎病態モデルマウスにおけるTRPM8発現神経数の変化について検討を行ったところ、遠位結腸粘膜においてTRPM8発現神経線維の顕著な増加が認められた。さらに、粘膜層にこれらのチャネルが発現する細胞状の免疫活性も増大していた。 炎症に伴う内臓痛覚過敏には遠位結腸粘膜層におけるTRPM8が発現する神経線維と炎症性細胞の増加が大きく関与していると考えられた。内臓知覚過敏と温度感受性TRPチャネル発現知覚神経との関連性の研究は消化器病関連学会から注目されているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、初年度は、炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおいて熱刺激受容体TRPV1および冷刺激受容体TRPA1・TRPM8の起源と局在の変化を明らかにすることであった。各項目について達成度を評価した。 (1)炎症性胃腸疾患病態モデルマウスの作製:この検討に関しては、炎症部位における好中球の浸潤に関してさらなる検討が必要と考えている。 (2)炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおける熱刺激受容体TRPV1、冷刺激受容体TRPA1・TRPM8の発現局在・発現量の変化:炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおけるTRPA1の検討が実施できていない。 (3)炎症性胃腸疾患モデルマウスにおける熱刺激受容体TRPV1・冷刺激受容体TRPA1・TRPM8を介する生理反応の変化:今、TRPM8を介する疼痛反応に関して検討を行っている。 次年度では、炎症性消化管疾患モデルマウスにおいてTRPV1、TRPA1・TRPM8を介する生体反応の変化を検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果を受けて、次年度以降は炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおける消化管粘膜血流反応の変化や、摘出消化管標本の平滑筋収縮弛緩反応の変化を検討していく。特に、TRPM8について検討を進める。炎症性胃腸疾患病態モデルマウスでは反応性の亢進が予想される。そして、TRPV1・TRPA1・TRPM8を介する消化器機能増大反応が炎症性胃腸疾患モデルの知覚過敏につながるかについて考察していく。
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Causes of Carryover |
初年度の研究で、炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおいて熱刺激受容体TRPV1および冷刺激受容体TRPA1・TRPM8の起源と局在の変化をほぼ明らかにできた。 一方、炎症性胃腸疾患病態モデルマウスの作製に関しては、炎症部位における好中球の浸潤に関してさらなるMPO活性の測定が必要と考えている。炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおける熱刺激受容体TRPV1、冷刺激受容体TRPA1・TRPM8の発現局在・発現量の変化の検討では、炎症性胃腸疾患病態モデルマウスにおけるTRPA1の検討が実施できていない。炎症性胃腸疾患モデルマウスにおける熱刺激受容体TRPV1・冷刺激受容体TRPA1・TRPM8を介する生理反応の変化に関する検討では、TRPM8を介する疼痛反応に関して検討を行っている。そこで、次年度ではこの未実施の検討項目の実験を行うために科学研究費助成金の一部を残すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
助成申請当初計画は進行が少し遅れたが、おおむね研究の目的は達成できたが、一部未実施である実験項目があった。平成28年4月以降も一連の研究をさらに続行するために、実験動物費、理化学器具費、抗体・試薬費に使用する。また、その成果を国際学術誌や学術学会において発表するために用いる。
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