2015 Fiscal Year Research-status Report
循環動態異常を伴う先天性心疾患患児の薬物動態変動機構解明と治療最適化への展開
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15K08091
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田口 雅登 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20324056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市田 蕗子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30223100)
廣野 恵一 富山大学, 大学病院, 助教 (80456384)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小児薬物動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者は、小児・高齢者を対象とする臨床薬物動態研究に取り組んできた。本研究では、先天性心疾患症例の薬物動態変動機構の解明を図るとともに、薬物動態に関する基礎情報を補完するため、in vitro実験等を行う。初年度はワルファリンの至適投与量に関する研究、およびカルベジロールとアミオダロンの相互作用機序の解明を行った。(研究概要は以下の通り) 1.ワルファリン抗凝固作用の共変量に関する解析:ワルファリン維持投与量には大きな個体間変動と個体内変動が観察される。小児集団における発達の個体差は大きいため、我々は小児発達の影響に対して頑健なモデルと考えられるアロメトリー式に基づく仮想的なbody size(SIZE)を用いて、薬理効果に関する共変量の評価を試みた。計1022ポイントの実測値を解析した結果、VKORC1の1173Cアレルを有する患者では抗凝固作用が47.3%に減弱する事、およびボセンタン併用時の抗凝固作用は、非併用時の84.1%に低下する事が示唆された。(Drug Metab. Pharmacokinet. 論文印刷中) 2.カルベジロール代謝に及ぼすアミオダロンの影響:カルベジロールの主代謝経路はUDP-グルクロン酸転移酵素による直接抱合反応である。我々はプールド・ヒト肝ミクロソームにおけるラセミ体のグルクロン酸抱合反応がアミオダロン共存下でR体選択的に亢進する現象を見出した。本研究では、こうした反応亢進機構を解析した結果、反応液中に含まれるウシ血清アルブミンに対するカルベジロールの蛋白結合がアミオダロンによってR体優位に変動することが明らかとなった。すなわち、R体選択的に抱合反応が亢進したのは、BSAに対するCRVの特異的な蛋白結合がS体よりもR体で大きく変動したためと推察された。(Biol. Pharm. Bull., 論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルベジロールの臨床試験は当初見込みよりも参加症例数が少ないものの、初年度のうちにシルデナフィルの臨床薬物動態試験に着手することができた。さらに、医療現場のニーズより新規経口利尿薬トルバプタンの動態評価、さらに新生児におけるカフェインの動態研究の計画がすすんでおり、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
先天性心疾患(あるいはその術後)の割合が多い小児患者集団では、ほとんどの薬物の体内動態が明らかにされていない。我々は臨床的に使用ニーズの高い薬物を優先的に研究対象に組み入れる予定である。また、症例数の増加が少ないと判断される時には速やかに、北陸地区の研究協力者の施設からの参加を検討する。 また、小児期においてはCYP3Aの発現変動が予想されることから、薬物代謝に関与する分子種を明らかにする目的で、ヒトP450発現系ミクロソームを用いたin vitro実験を行う予定である。
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Research Products
(4 results)