2015 Fiscal Year Research-status Report
連鎖球菌由来SLS関連因子の分子機能解析と感染制御への応用
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15K08113
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
大倉 一人 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (00242850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長宗 秀明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40189163)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 感染症 / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)SortaseA機能を利用した膜間ペプチド転移ツールに関する解析: グラム陽性菌が産生するSortaseA(SrtA)の転移反応を利用した薬物送達システムの構築を試行した。転移対象タンパク質中の転移配列(LPXTG, Xは任意のアミノ酸)を認識してTG間で切断し、そのN末端側を受容配列オリゴG(≧GGG)のN末端αアミノ基に転移する機能を持つSrtAを用いて、転移基質あるいは受容基質となるペプチドを調節することで、標的化分子であるLTBPを含むペプチドを転移したリポソームは、標的がん細胞に対する結合性を示した。
2)細胞溶解活性における静電ポテンシャルフィールドの役割: カルジオトキシン(CT)への2個のアミノ酸挿入によって生じたカルジオトキシン様塩基性タンパク質(CLBP)は細胞溶解活性を持たない。CLBPが細胞溶解活性を消失した要因を動的構造解析から検証した。CTとCLBP間で挿入部位の二面角などの変化はみられず、また、立体疎水性度の変化も確認できなかったが、静電ポテンシャルフィールドの分布様式がCTとCLBPで顕著に異なることを見いだした。また、CLBPは血液凝固阻害因子であるX因子結合タンパク質(X-bp)と相同性を有し、2量体化したCLBPが、X-bp様な機能を有している可能性を報告した。
3)ボンクレキン酸アナログによるエネルギー産生の制御: ミトコンドリアADP/ATP透過担体の阻害剤として知られるボンクレキック酸の誘導体17個を作成し、そのADP/ATP透過担体阻害について検証した。KH-1、KH-7、KH-16、およびKH-17がスクリーングで検知され、そのなかで、KH-7は内膜の電子伝達系を阻害することなく、ADP/ATP透過担体を特異的に阻害することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関わるウェット系の実験手法(遺伝子操作、細胞培養、タンパク質の生成・修飾、ツールの設計・合成など)はこれまでに十分な運用実績があり、実施過程で不具合が生じにくい。また、各種ライブラリーも整備されてきており、柔軟かつ迅速に対応できる体制が構築できつつある。ドライ系の実験に関しても、低分子からタンパク質まで幅広く対応できるツール(分子力学法MM、分子動力学法MD、分子軌道法MO、ホモロジー解析、ドッキング解析、キャビティー解析など)が整っており、研究の進捗に応じてきめ細かく調節が可能である。また、共同研究者、研究協力者との定期的な打ち合わせによって、得られたデータを開示して議論することで、問題点や研究の進め方が明確にできた。これらの理由から、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)細菌に由来する細胞溶解毒素(サイトライシン)によって膜孔が形成したヒト細胞内へのカルシウム流入と、それによる小胞体からのカルシウム流出によって、ミトコンドリア内膜が受ける影響について検証する。指標の1つとして透過性遷移の亢進があり、ミトコンドリアの膨潤とそれにともなう膜間スペースからのタンパク質の放出を検知する。古典的CDCとILYでは膜コレステロールへの親和性が異なることから、これら毒素によるカルシウム誘発性カルシウム放出に差異が生じることが予想される。
2)S. anginosus に由来するSLSペプチドは膜修飾能を有している。細菌感染にともなって、膜孔を経由してSLSペプチドが細胞内へ到達することは十分に考えられる。SLSは広く細胞膜へ作用を示すことから、ミトコンドリア内膜への効果を検証する。内膜構造が変化したことに伴う、電子伝達系の機能失調のひとつであるATP産生の低下などを指標として検証する。
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Causes of Carryover |
購入を計画していた試薬のメーカー在庫の関係で調達が間に合わなかったものが一部生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細菌由来の細胞溶解毒素が活性を発現する際に、NSAIDsによる修飾効果の有無を明確にする。古典的CDCの一種であるSLOやヒト特異的ILYと、骨格構造の相違から系列分けしたNSAIDsの相互作用を血液寒天培地を用いた溶血活性を指標として検証する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Bongkrekic Acid Analogue, Lacking One of the Carboxylic Groups of its Parent Compound, Shows Moderate but pH-insensitive Inhibitory Effects on the Mitochondrial ADP/ATP Carrier2015
Author(s)
Atsushi Yamamoto, Keisuke Hasui, Hiroshi Matsuo, Katsuhiro Okuda, Masato Abe, Kenji Matsumoto, Kazuki Harada, Yuya Yoshimura, Takenori Yamamoto, Kazuto Ohkura, Mitsuru Shindo, Yasuo Shinohara
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Journal Title
Chem. Biol. Drug Des.
Volume: 86
Pages: 1304-1322
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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