2016 Fiscal Year Research-status Report
暑熱負荷による唾液腺幹細胞の増殖と分化の誘導-新たなドライマウス改善方法の開発
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15K08208
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
紫藤 治 島根大学, 医学部, 教授 (40175386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片倉 賢紀 城西大学, 薬学部, 准教授 (40383179)
松崎 健太郎 島根大学, 医学部, 助教 (90457185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 唾液腺幹細胞 / 暑熱馴化 / ドライマウス / 暑熱暴露 / Salisphere |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は実験動物の唾液腺(個体レベル)および単離した唾液腺幹細胞において、温熱刺激が唾液腺幹細胞の増殖と分化に及ぼす影響を検討することを目的とし、その研究を継続したが、唾液腺幹細胞塊(Salisphere)の形成を安定的に得ることが困難であった。そこで、本年度は暑熱曝露と類似する刺激である運動に注目し、運動トレーニングによるラットの唾液分泌量や唾液分泌に重要な役割を果たす水チャネルであるアクアポリン(AQP) などの機能性タンパク質の発現変化を解析した。 Wistar系ラットを環境温24±1℃で1週間飼育した後、自発運動トレーニングを開始した。40日間の自発運動トレーニング後にラットを全身麻酔し、塩酸ピロカルピン(0.5mg/kg)を腹腔内投与して唾液分泌量を測定した。また、経心脱血後にラット顎下腺を摘出し、AQPなどのmRNAとタンパク質発現量を解析した。 自発運動トレーニングによりピロカルピン誘発性の唾液分泌量が有意に増加し、唾液中のNa+濃度やタンパク質濃度を低下した。また、運動トレーニングによりの顎下腺の血管内皮細胞に発現するAQP1のmRNAおよびタンパク質発現量が増加した。さらに、血管新生の調節に関与する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現量が顕著に上昇した。自発運動トレーニングはラットの唾液分泌機能を亢進し、その機序として顎下腺のAQP1やVEGFの発現上昇が関与する可能性が示唆された。 さらに、温熱刺激による唾液腺幹細胞の増殖、分化の制御に関わる細胞内情報伝達系を考察するため、異なった実験系を用いて以下の検討を行った。温度感受性受容器の一つであるTRPV1のアゴニストであるカプサイシンおよび熱刺激をマウス線維芽細胞に負荷した。カプサイシンと熱刺激は両者ともMAPキナーゼを活性化し、細胞骨格の維持に関与するアクチンの重合を促進した。カプサイシンはHSP70のみを誘導したが、熱刺激はHSP70とHSP90を誘導した。また、熱刺激はTRPV1の発現を抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個体レベルでの暑熱曝露による唾液腺幹細胞の増殖と分化についての基本的検討はほぼ終了しており、得られた結果も十分に理解されるため、「進捗状況はおおむね順調に進展している」と判断された。培養したラット唾液腺幹細胞の増殖と分化に対する培養温度の影響の検討においては、Salisphereの形成は期待通り確認できたものの、その数とサイズが安定せず、予想よりそれぞれ少なく小さかった。本年度も唾液腺からの幹細胞のサンプリングと培養によるSalisphere の形成方法の改善を目指したが十分に安定した結果を得ることは困難であった。したがって、この部分の研究の進捗状況は「やや遅れている」と判断される。しかし、上述の問題点により研究の遅れ補填すべく、将来に向けたより簡便なドライマウス(口腔乾燥症)の治療法開発のため、暑熱曝露と類似しより簡便に応用可能な運動トレーニングよる唾液腺機能変化についての個体レベルでの研究を追加し、良好な結果を得た(学会発表済み、論文投稿中)。さらに、温度刺激による細胞内増殖・分化シグナルに関する関連する研究も並行して遂行し、良好な結果を得た(国際雑誌への公表済み)。これらから、本年度の進捗状況は全体として「進捗状況はおおむね順調に進展している」と判断しても良いと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
個体レベルでの暑熱曝露および運度トレーニングによる唾液腺幹細胞の増殖と分化への影響についての検討において、暑熱暴露は唾液腺幹細胞の分化を促進する可能性が示唆されている。今後は平成28年度に予定していた幹細胞の増殖・分化に密接に関与する転写因子{Hes1やHes5などのbHLH因子(basic region-helix-loop-helix構造を持つ転写制御因子)}が密の顎下腺における発現解析ならびに暑熱暴露による細胞増殖・分化への影響についての解析を継続させる予定である。このため、以下の検討を行う。さらに、運動トレーニングした唾液腺における転写因子や増殖・分化シグナルなどの解析も並行して行う。 我々の予備的実験では、ラット唾液腺から採取した細胞からSalisphereがきれいに誘導されたが、その後、安定したSalisphereの形成が得られなくなった。しかし、培養したラット唾液腺幹細胞の増殖と分化に対する培養温度の影響の検討において、ラットの顎下腺から採取した細胞から誘導したSalisphereの多くは幹細胞マーカーであるc-Kit陽性であったことから、Salisphereを形成する細胞は唾液腺由来の幹細胞である可能性が示唆されている。これまでの解析により唾液腺培養細胞にはCD24/CD29二重陽性細胞(高い増殖能を持ち幹細胞などの未分化細胞を含む)が15%程度含まれていることを確認している。今後は、本学にあるセルソーティング機器を用いて CD24/CD29細胞を回収し、MSG培地で培養後に純度の高いSalisphereを形成する手技を習得・確率し、温度刺激の影響を解析する。
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Causes of Carryover |
新たに行った個体レベルでの運動トレーニングによる唾液腺幹細胞の増殖と分化についての検討における、実験動物の購入・飼育費が新たに加わったが、フローサイトメトリーに使用する費用が減少したため、合計として当初予定額より減額した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降は実験計画通りに費用が用いられるほか、繰り越し分は、唾液腺幹細胞の純化のために行うフローサイトメトリーの使用費ならびに高額な消耗品費に充てられ。
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