2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌および炎症性腸疾患に関わるVDRの高次機能の解明
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15K08298
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30376644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 聡明 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80210920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ビタミンD受容体 / VDR / 大腸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンDの生理作用はカルシウム代謝、細胞の増殖・分化など多岐にわたるが、これらの生理作用はビタミンD受容体(VDR)を介した標的遺伝子の転写制御により発揮される。現在までにビタミンDは大腸癌の発症リスクを低下させるという疫学的研究結果が報告されており、また自身のこれまでの研究によりVDR遺伝子欠損(VDRKO)マウスは野生型マウスに比べ炎症性腸疾患の症状が重篤化することが明らかになったが、いずれもその分子メカニズムについては不明な点が多く、カルシウム代謝を介した間接的な作用によるものか、大腸におけるVDRの直接作用によるものかは明らかになっていない。そこで本研究では大腸特異的VDRKOマウスの作出および解析を行うことにより、小腸や腎臓におけるカルシウム代謝調節を無視できる系において、大腸におけるVDRの高次機能の解明をめざす。 本年度はまずタモキシフェン誘導性のCDX2P-CreERT(tg/0)/VDR flox/floxマウスを作出しタモキシフェン投与後4週におけるVDRの遺伝子発現を検討した。この結果、このマウスの小腸、腎臓におけるVDR遺伝子発現はコントロールであるVDR flox/floxマウスとの有意差が認められず、両組織におけるVDRの標的遺伝子であるS100gの遺伝子発現についても有意差は認められなかった。次に大腸におけるVDRの遺伝子発現を検討したところ、このマウスでは近位大腸におけるVDRの遺伝子発現量が有意に減少しており大腸特異的VDRKOマウスであることが判明したが、遠位大腸においてはVDRの遺伝子発現量は減少していたものの個体差が大きく有意差は認められなかった。次に大腸特異的VDRKOマウスとコントロールマウスの近位大腸における遺伝子発現の違いをマイクロアレイにより検討したところ、VDRの新規標的遺伝子候補がいくつか同定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は研究実施期間である3年間のうちに大腸特異的VDRKOマウスの作出および解析を行うことにより、小腸や腎臓におけるカルシウム代謝調節を無視できる系において、大腸におけるVDRの高次機能の解明をめざすものであるが、現在までに大腸特異的VDRKOマウスの作出が完了し、近位大腸におけるVDRの新規標的遺伝子候補も同定できた。また、大腸特異的VDRKOマウスへのアゾキシメタン(AOM)/デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与による炎症関連大腸癌モデルを樹立し表現型解析をおこなっており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果より近位大腸におけるVDRの新規標的遺伝子候補を同定することができたため、今後はin vitroの実験系によりこれらの遺伝子が確かにVDRの新規標的遺伝子であることを示すとともに、現在おこなっている大腸特異的VDRKOマウスへのAOM/DSS投与による炎症関連大腸癌モデルの表現型解析を進め、大腸におけるVDRの高次機能の解明をめざす。
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