2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病におけるインスリン抵抗性の発症機序解明と治療への応用
Project/Area Number |
15K08319
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
小林 正貴 東京医科大学, 医学部, 教授 (10195810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 教授 (10468639)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (60532687)
下畑 誉 東京医科大学, 医学部, 講師 (90516030)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CKD / インスリン抵抗性 / カルニチン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)患者に合併する原因不明のインスリン抵抗性の発症機序解明を目的に,昨年度までの検討の結果,CKD患者では対照群(腎臓病非罹患者)と比較して,腎機能(eGFR値)の悪化に伴い血清アセチルカルニチン濃度の有意な増加がみられた。アセチルカルニチンは,主に,骨格筋における脂肪酸β酸化の代謝産物として,血液中に放出されることから,CKDでは,骨格筋における糖ー脂質エネルギー代謝異常が生じている事が,インスリン抵抗性の発症に関与している可能性が示唆される。そこで,今研究では,CKDにおける骨格筋における糖ー脂質エネルギー代謝状態を評価するためのCKDモデルラットを作成した。CKDモデルは,左腎動脈枝2本と右腎動静脈全枝を結紮処理し腎摘出した5/6腎臓摘出を施し,10週間飼育し作成した。飼育後,血液と腎臓,肝臓,骨格筋を摘出して,カルニチン関連物質を測定した。その結果,5/6腎臓摘出モデルラットでは,偽手術を施したコントロールラットと比較して,腎機能の低下は見られるものの,血液中アセチルカルニチン濃度の増加は見られず,寧ろ,有意な低下が生じ,患者病態を反映していなかった。アセチルカルニチンの前駆物質であるカルニチンも同様に有意な減少が見られた。カルニチンは,腎臓にて合成されることから,腎摘出モデルではカルニチン代謝そのものが欠落している事が,ヒト患者病態を反映しない原因であることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の慢性腎不全(CKD)患者における臨床検体での検討に加え,今年度は,動物モデルでの検討を実施した。当疾病動物モデルは,CKD患者の病態を反映するものではなかったが,病態の解明には骨格筋のみに焦点をあてる必要があることが確認でき,次年度の骨格筋培養細胞における検討に繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
インスリン抵抗性を伴う慢性腎臓病(CKD)患者では,腎機能の悪化に伴って血液中アセチルカルニチン濃度が増加しており,骨格筋におけるインスリン抵抗性の発症機序に関与している事が示唆されるが,動物モデルでの検証に限界がある事がわかったため,今後は,骨格筋培養細胞を用いて,アセチルカルニチンがインスリン抵抗性の発症に及ぼす機序を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度,実施した慢性腎不全ラットが,検証の結果,疾患モデルとして,ヒト臨床上との乖離がある事が判明し,予定していた詳細な検討を行う必要が生じなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度から実施する培養細胞での検討で,より詳細な疾病発症のメカニズム解明に研究費を使用する予定である。
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