2015 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症から肺腺癌の発生機序の解明、特にmiRNAの役割について
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15K08372
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
松原 修 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 研究員 (40107248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 雄一 公益財団法人がん研究会, その他部局等, その他 (80222975)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間質性肺炎 / 肺線維症 / 肺腺癌 / adenocarcinoma in situ / 異型腺腫様増生 |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的] 「間質性肺炎/肺線維症から細気管支上皮の増生、atypical adenomatous hyperplasia (AAH) 、adenocarcinoma in situ (AIS)、 lepidic growth patternの腺癌へと進展するのではないかとの仮説のもとに、肺線維症を基盤に発生する肺腺癌と合併しないものを比較する。 [方法] 肺線維症を基盤に発生する肺腺癌と合併しないものの手術材料を検討し、AAH病変、肺胞の細気管支化の病変について違いを検討した。 [結果] 肺線維症を基盤に発生する肺腺癌(30例)と肺線維症を合併しないもの(30例)の手術材料の組織を比較検討した。組織型の分化度、subtypeや浸潤の有無、大きさなどに有意な相違を認めなかった。AAH病変、2型肺胞上皮、細気管支上皮の増生像、また肺胞の細気管支化の病変について、頻度の違いを検討すると、AAH病変と肺胞の細気管支化病変が、優位に肺線維症を基盤に発生する肺腺癌症例の方で多かった。またTumor infiltrating lymphocytesにPD-1、腫瘍細胞にPD-L1がしばしば染色された。 [結論] 肺の線維化機序と肺胞の細気管支化の病変が深く関係し、またAAH、AISへの失点へ関与していることが示唆された。また腫瘍細胞のPD-L1の陽性の割合が腫瘍の大きさと関連し、AIS, MIAから浸潤がんへの進展にも関連しているのではないかと示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.肺胞の細気管支化の病変は肺線維症のhoneycomb lesionの近傍により多く、また多発して認められ、肺の線維化機序と肺胞の細気管支化の病変が深く関係していることを示唆した。しかし、AAH病変との関連は薄いように思われる。これは、肺胞の細気管支化の病変とAAHの病変の関連について更なる検討を要すると思われた。 2.肺癌組織にTumor infiltrating lymphocytes (TILs)が顕著な症例と、あまり認められない症例があることが分かり、前者の症例の頻度は30-40%程度と思われた。TILsが顕著な症例で、PD-1が52.5%、腫瘍細胞にPD-L1が58.7%と高頻度に染色された。また、PD-L1陽性の腫瘍細胞の割合はAISとMIAの症例で優位に低かったことから、腫瘍の大きさ、進展と関連しているのではと考えられるが、より定量的な検討が必要ではないかと考える。 3.凍結保存していた腫瘍肺組織からミクロトームを使用して作製した10μmの凍結切片20枚より、レーザーマイクロダイゼクション法にて腫瘍部を切り出し、DNAを抽出する実験を始めているが、凍結標本でAIS, AAH, 細気管支化の病変の鑑別が大変に困難であり、より工夫がいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の肺腺癌の手術材料でこの型の症例が圧倒的に多いことに気づいている。早期発見、早期の生検、手術が増加したことによるものかと考える。それと同時に、肺線維症の合併例の多いこと、主病変の周辺にAIS、AAH病変、2型肺胞上皮、細気管支上皮の増生像、また肺胞の細気管支化、程度のlowとhigh gradeといった病変をしばしば認めることができる。しかもそういった病変は肺線維症を伴っていることが多い。「肺線維症 → 肺胞の細気管支化 → 2型肺胞上皮、細気管支上皮の増生 → AAH → AIS → lepidic growth patternを示す腺癌」と進展するとの仮説のもとに、肺線維症を基盤に発生する肺腺癌と肺線維症を合併しないものを比較して、初期の肺腺癌の発生機序の解明を行いたい。具体的には、 ①肺線維症を基盤に発生する肺腺癌(30例)と肺線維症を合併しないもの(30例)の手術材料の組織を検討し、組織型、浸潤の有無、大きさ、臨床病理学的検討を行う。 ②早期の肺腺癌の手術材料を20例程度から凍結材料を採取する。 ③手術材料中の腺癌組織、atypical adenomatous hyperplasia (AAH)病変、2型肺胞上皮、細気管支上皮の増生像、また肺胞の細気管支化の病変について、免疫組織学的検索を含めた病変の性格、分布、頻度の違いを検討する。
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Causes of Carryover |
研究材料の肺組織、手術材料の腺癌組織、atypical adenomatous hyperplasia (AAH)病変、2型肺胞上皮、細気管支上皮の増生像、また肺胞の細気管支化の病変の凍結材料の収集が、思ったように進まないことから、肺組織からミクロトームを使用して作製した10μmの凍結切片より、レーザーマイクロダイゼクション法にて腫瘍部を切り出し、DNAを抽出、制限酵素で消化し、共通のアダプターを付加したのち、単一のプライマーによるPCR増幅といった実験が遅れているためです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
凍結材料を用いたmiRNAの解析、SNP解析の実験を進めるための物品を購入し、研究を勧めたいと考えています。具体的には、DNeasyTissueKit(Qiagen, Valeneia, USA)を用いてDNAを抽出、Microcon (Millipore)で超純化して用いる。Affymetrix® Genome-Wide Human SNP 6.0 Nsp/Sty Assay (Genome-Wide fluidics) を行う物品を購入する予定です。
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Research Products
(6 results)