2015 Fiscal Year Research-status Report
新たなメカニズムによる血糖コントロールと糖代謝異常の治療への展開
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15K08427
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
倉林 睦 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 准教授 (40346713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 由彦 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40233944)
井上 啓史 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00294827)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖代謝 / 血糖低下 / 肝臓 / 迷走神経 / 臓器保護性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々のグループの検討により、hindlimb ischemia-reperfusion(IR)は、アセチルコリン産生系を賦活化させ、遠隔臓器である心筋において Choline acetyltransferase(ChAT), HIF-1α、GULT-4を介した糖取り込みを亢進させ臓器保護性に働くことがわかっている。この糖取り込み機構が全身で賦活化されていれば、IRにより血糖低下を来たすものと考え、C57BL wild typeマウスを用いて血糖低下を確認した。IRに伴うこの血糖低下のメカニズムを解明することは、今後の糖代謝異常における新たな治療方法の模索につながるものと考え検討を行った。まず、グルコースのmolecular probeである2-NBDGを用いて主要臓器の糖取り込みの変化を検討した。蛍光強度の増加は肝臓で最も強く、血糖低下の責任臓器は肝臓であることが示唆された。IR群では肝臓においてもHIF-1αおよびGLUT-4の発現が亢進しており、IRは肝においても同様のメカニズムの発動をもたらすことが示され、これにより肝への糖取り込み亢進が亢進しているものと考えられた。また、迷走神経肝臓枝の興奮は、糖新生の抑制を来たすことがこれまでに報告されていることから、IRによる遠隔臓器のアセチルコリン産生系の賦活化に伴って全身の迷走神経系が賦活化されている可能性も考え、G6Pase、PEPCKの発現を遺伝子レベル、蛋白レベル双方で検討し、IR群ではこれらの発現も抑制されていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調書作成時に推測した当初の仮説のとおりの結果が得られており、進捗状況も平成27年度に予定していた通りに、研究も推移している。以上より、概ね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、本研究の計画を立てた際の仮説はほぼ肯定される結果が出ている。今後も、当初の予定の通り、研究を遂行する。 したがって、平成28年度以降は、現在得られている結果の検証および迷走神経系の関与の検討が主な内容となる。 まずは、中枢神経を含めた迷走神経系の活動性の変化に関する組織学的検討を行う。次に、中枢神経、末梢神経、各レベルでの迷走神経系の遮断により、平成27年度に得られたIRによる肝臓での糖取り込みの亢進、糖新生の抑制が打ち消されるかの検討を行う。これらの研究遂行の際に行う予定としている手技としては、免疫組織化学染色、薬剤の脳室内投与、迷走神経肝臓枝切離など、いずれの実験手技もすでに多数の論文で施行されている確立された手法であり、問題なく遂行できるものと考える。
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